なのはSS | 八屋
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遥か空に響くフェレットの声
 闇の書事件の後、随分と日が経ってからのこと。 

 彼女はあの戦いの後、僕に向ってこう言った。
 
「どうして皆、戦うんだろうね」
 
 僕はそれに答えることは出来ず、首を横に傾ける。
 
「そうだよね。ユーノ君にもわからないよね。私だってわからないもん」
 
 どこか寂しそうに遠い空を見つめる彼女は立ち上がる。僕は時計を見て一言、呟いた。
 
「え? 休憩お終い? う〜ん、もうちょっと休んでいたかったな〜。あ、それよりもユーノ君、試してみたい魔法があるんだ」
 
 そう言って、彼女は僕の作る結界内の空に舞い上がっていく。
 
「レイジングハート、ACSモード展開!」
 
 そう言って、彼女は魔方陣を展開する。
 
 それはあの戦いで使った最後の切り札だった。
 
「Yes, My Master. ACS Mode Development, Standby Ready」
(はいマスター。ACSモード展開、開始準備)
 
「ちょ、なのは! 何を!」
 
「Preparation Complate. It is possible to go at any time.」
(準備完了。いつでもいけます)
 
「見ててユーノ君! コレさえ極められれば強い敵だってちゃんとお話を聞いてくれるはずだよ!」
 
「いやいやいやいやいや! ダメだって! なのは! なのは――」
 
「いっけーー!!」
 

 僕の結界はいとも簡単に壊れ、空には桃色の魔力光が。
 
 その後、クロノたちにこっぴどくしかられたのは言うまでも無い。
| 神八 | 15:23 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
八神家の玄関にて
  
「ザフィーラさんはもう人の姿に戻らないんですか?」
 
 玄関で彼女を待っている間に思った疑問。
 
 思い切って本人に聞いてみることにした。
 
 闇の書事件解決して以来、ザフィーラさんの姿はほとんど犬形体で固定されてしまっているのが気になったからだ。
 
「いや。流石に一生この姿でいるというわけではない。主や他の守護騎士たちに出来ないことが起きたとすればそれに助力する形で人の姿に戻ることもあるだろうな。それに、この姿のほうが魔力消費も少なくて済む。主はやての魔力消費も少しは減ることだろう」
 
 なるほど。そういう理由があったのか。って、少し考えれば分かることじゃないか。僕、少し平和ボケしたのかな?
 
「ザフィーラさんは常に他の人のことを考えているんですね」
 
「それが私のすべきことで、しなければならないことだからだ。ユーノ、お前にもそういう護るべき人、護らねばならない人がいるんじゃないのか?」
 
 鋭いなぁ。ザフィーラさんは。でも……。
 
「なのははもう一人で何でも出来ます。僕が出来ることといえば暇なときに訓練を手伝ってあげることぐらいか、見守ってあげることぐらいですよ」
 
「ふむ。そうか。そう思っているのならばそうしてあげるのだな。すべきことがあるのならば、後悔しないうちにしておくのが騎士というものだ」
 
 ははは……騎士じゃないんですけどね。
 
「その通りかもしれない、ですね」
 
「うむ。聞きたいことはそれだけか? ならば私は家の警固に――」
 
 ザフィーラの言葉を遮るように、ガチャリ! と玄関が勢いよく開く。

「たっだいま〜!」
  
「……ヴィータか。玄関は優しく開けろとあれほど主に言われたではないか」
 
 玄関の扉を開いたのはゲートボールのスティックを持ったヴィータだった。
 
「ん。お〜。次からちゃんとやるって、って、ユーノじゃん。はやてに用か?」
 
 相変わらず元気だなぁ、ヴィータは。
 
「うん。あの本についていくつか聞きたいことがあってね。あぁ。勿論変なことを聞くわけじゃないから安心して」
 
「ふぅん? ま、しばらくは帰って来ないぜ。はやては翠屋でなのはたちと仲良く茶してるぜ 」
 
「えぇ?! そんな。聞いてないよ、ってそりゃそうか。仲良し三人組だからなぁ」
 
「いんや。五人だぞ。アリサとすずかを忘れてやるなよな」
 
 ……どうやら僕の入れる隙は無いようだ。
 
「ユーノ。……もうしばらくココで世間話でもしていくか?」
 
 ザフィーラさんの同情染みた言葉。
 
 ……素直にそうするしかないみたいだ。
 
「は、はは。そうですね――はぁ」
 
「? なんだよ。行かねぇのか?」
 
 ヴィータなら行っても歓迎されるだろうけど、僕が行ったらお邪魔だろう。
 
「うん。あ、お菓子持ってきたんだけど、ヴィータ、食べる? ザフィーラさんも、どうですか?」
 
「本当か?! 待ってろ、お茶を持ってくるぜ!」
 
「ふむ。たまにはいいだろう。ならば玄関ではなく中でいただくとしよう」
 
 
 う、う〜ん? 確かに、たまにはこういうのもいいの、かな?
 
 
 
 ――オチも無く終わります――。
| 神八 | 21:34 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
A’sの力量  前編

 
 ――時空管理局、模擬実戦闘室に一人の少女と、二人の少年、三人の女性に一人の男性。計七人が全員、一つのモニターを見つめていた。
 
 内の一人、髪に二本のヘアピンを留めている少女、八神はやてがモニターに映る映像を見て、呟く。
  
「うわー、えげつないなぁ……フェイトちゃん」
 
 
 モニター内に映る、フェイトと呼ばれた金髪の少女が空を駆りながら、金色に光る刃の付いた戦斧を振り回し、同時にモニター内に映る、ハンマーらしき物を手に持つ赤髪の少女を吹き飛ばした。
 
 赤髪の少女は空から大地へと一直線に落ち、激しく地面に衝突、粉塵を巻き上げる。フェイトと呼ばれた少女がそれを確認し、しかし、身構える。

『ギガントフォルム!』

 粉塵の中から叫び声が。それと同時に、吹き飛ばされた少女がハンマーのような物を巨大化させ煙の中から現れる。そのままフェイトと呼ばれた少女を叩き潰すかのように、ハンマーを振り下ろした。
 
『うぉらぁぁぁあ!』
 
 
「……いや。ヴィータも相当凄いって」
 
 次いで、口をひらいたのは一見すると女の子のような顔立ちをしている少年、ユーノ・スクライアだった。
 
「アレ喰らってダメージ無しって相当ですよね? きてるなー、ヴィータちゃん」
 
「調子は良いらしい。……ってエイミィ、その隣を見てみるんだ。多分……こっちも相当だと思うよ」
 
 エイミィ・リミエッタが素直に感心している横でクロノ・ハラオウンが呟く。
 
 モニターが、別の場所を映し出す。
 
 
『カートリッジロード……レヴァンティン!』
『Ja!』
 
 大地でたたずむ――紫色の長髪の女性が叫ぶと同時、手に持つ剣が、まるで弾をリロードするかのように刀身の樋部分に取り付けられた紫色の金属部分が上下し、その間に、隙間から弾が弾き出される。半秒、刀身が炎に包まれる。
 
 女性はそれを構えると、一気に踏み込み、一点に向かい駆け出した。
 
 その先にいるのは、白い服を着た、少女。
 
 
『レイジングハート、お願い!』
『All right my master.Cartridge load...It shifts to the shooting mode after evades, and it launches it at the same time』
(了解ですマスター。カートリッジロード……回避した後、射撃モードに移行、同時に発射します)
 
 白き服を纏う少女の持つレイジングハートと呼ばれた杖に取り付けられた赤い宝石がキラリと光ると、こちらもまた同じように金色の金属部分が上下し、弾を排出する。
 
 プシューと、熱の排出音と共に、杖の先端部分が丸みを帯びた状態から、上部が開けた、砲撃モードとやらへと変形する。
 
 の、間に紫髪の女性が少女の数歩前まで詰め寄っていた。
 
「紫電――一閃!」
 
 少女の体をその炎の帯びた刀身が引き裂こうとするその刹那。
『Flash move』
 少女の足からピンク光の翼が生え、空へと飛翔。杖を女性へ向け構える。
 
Divine Buster
 
 魔方陣が少女の周りと杖の先端と後端に展開、先端部分にピンク色の丸い球体が現れ急速に膨らんでいく。
『ディバイーン、バス――』
『遅い! はぁぁぁぁああ!!』
『え、は、早いよシグナムさ――?!』
 
 ドゴォン! と空中で爆発が起きる。
 
 
 
 なのはVSフェイトVSヴィータVSシグナム  前編 終  後編に続くかもしれません。

| 神八 | 20:31 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
A’sの力量 後編

 
 ――ォオン……と、爆発音が広がる煙幕の外の大気を震わしながら、消えてゆく。
 
『なのは!』
『シグナム!』
 
 地上で斧と槌が激しくぶつかり合う最中、空では爆発が起きた。それが視界内に映るやいなや、地上でぶつかり合っていた二人は、それぞれ自分の“味方”の名前を叫ぶ。
 
『――っち、馬鹿やりやがったか、なのはの奴! おらぁ!』
『シグナ……く――ぅ?!』
 
 赤毛の少女は、思わず舌打ちし、斧を手に対峙する金髪の少女に一撃を加えると一旦距離をとる。赤毛の少女は槌という得物を持つ反対側の手、すなわち左の手を右耳の後ろ側まで素早く移動させる。その指先の間には四つの小さな鉄球が挟まり、勢いよく左手を、身体の正面を切るように腕を振る。空を切った所々には、指の間に挟まっていた鉄球が四つ、均等の間隔を保ったまま、浮いている。
 
『行くぞ、アイゼン!』
『Ja!』
 
 愛槌から発せられる、同意と合図の言葉と共に、少女は勢いよく、四つの鉄球を愛槌『アイゼン』で撃ちつけた。
 
 撃ち付けられた鉄球は赤色の光を放ち、そして、空を切りながら飛んでゆく。向う先は金髪の少女。
 
 まっすぐに飛んでいくそれは、まさに、弾丸。
 
『……! バルディッシュ! いけるよね?』
Yes, Sir!
 
 鉄球の目標となる金髪の少女もまた、『バルディッシュ』という名の愛斧を振りかざし、迎え撃つ。
 
『フォトンランサー!』
『Photon lancer is set』
 
 愛斧が唱えると共に、少女の周りに金色の光の弾が複数個出で、そして、
『Fire』
 
 少女が腕を前へと振り下ろした瞬間に、光の弾が赤毛の少女めがけて放たれた。
 
『行くよ! バルディッシュ!』
『Sir』
 
 金色の弾と赤色の弾が交差し、そして、それと同時に少女が激突した。
 
『手加減は無しだぜ、テスタロッサ!』
『こっちだって、手加減はしないよ、ヴィータ!』
 
 二つの弾が入り乱れ、二人の少女が地上から空へと戦いの場を移す。
 
 高速ともいえる速さで、互いの愛武器による攻撃を繰り返す。二筋の線が空に描かれ、交わり、火花を散らし、そして離れていく。
 
 そして、次の切り込み戦の間際に、両者は叫ぶ。
 
『ギガント……シュラーク!!』
『ジェット……ザンバー!!』
 
 
 
 同時期に、
『――痛〜……シグナムさん、無理矢理すぎなの』
 
 白色の服を身に纏う少女と、紫髪の女性が互いに距離をとりつつ、浮遊していた。
 
『貴女の攻撃は、当たると、痛いからな……、やられる前に、もう一度、やらせて貰う! レヴァンティン!』
『Ja!』
 
 再び、紫色の金属部分を上下させ、熱の排出音と共に、今度は二発の弾を弾き出した。
 
 そして例の如く、刀身を変形させ、こちらは弓の形となった。
 
『ゆくぞ、高町なのは!』
 
 紫髪の女性は、白き服を身に纏う少女を高町なのはと呼び、そして、その少女に向けて、弓を構え、矢を引き絞る。
 
 
『シグナムさんに負けてられないの。レイジングハート! とびっきりの、行くよ!』
『All right . Starlight breaker set up!』
(了解です。スターライトブレイカー、セットアップ!)
 
 対する、高町なのはという少女は、こちらも負けじと勢いを増せる。
 
 レイジングハートと呼ばれる宝石がキラリと煌き、少女の周りに魔方陣を展開させる。但し、今回は先程のものとは違い、少女の周囲三百六十度という全方位という大きなモノだ。
 
 先程の砲撃モードの形のまま、その先端部分にピンク色の光が急速に球体をつくり、膨らんでゆく。
 
 
 
 そして、二人は同時に、言葉の引き金を、引く。
『シュツルム……ファルケン!!』
『全力全開! スターライト……ブレイカー!!!』
 
 
 全くの同時に、両者の攻撃が放たれた。
 
 方や高速の矢。方や極太の直線光。
 
 その両者の中心に割り込む形で、
『ギガント……シュラーク!!』
『ジェット……ザンバー!!』
 他の二人が、互いに技を出した。
 
 それらはぶつかり合い、そして、どれも道を譲らない。両者の間でそれらは、より激しく、ぶつかり合い、
『ちょ、待っ――』
『え――』
『ヴィータちゃ――』
『テスタロッサ――』
 
 四人のいた空域で、大気を裂くような爆発音と共に、大爆発が起きた。
 
 
 
「な、何をやってるんだ……彼女らは」
 
 訓練室の外――モニタールームでそれを見ていた一同が、驚きと共に息を呑んだ。
 
「み、皆! だ、大丈夫?!」
 
 エイミィが備え付けのマイクで訓練室内に心配の掛け声を送る傍ら、 
「う、あぁあ……こりゃまた……凄い」
 
 ユーノとその横にいるフェイトの使い魔アルフが違う意味で、息を呑んだ。その理由としては、空中で大爆発を起こしたのにも関わらず、へこんでしまっている、大地が目の前のモニターに映し出されていたからだ。『訓練室の修復作業』は、“今回”は彼らの仕事となっている。その悲惨な光景を見て、二人は息を呑む。規模が、規模だからだ。
 
「皆、加減知らずやからなぁ〜……私、参加せんで正解だったかも」
「同意です」
「同感ね」
「全くだ」
「うん」
「だね」

 
 八神はやての一言に、彼女の守護騎士の一人、体格が他のものよりも抜きん出ている大男ザフィーラと、同じく守護騎士、ザフィーラの横で佇む美女、シャマルが全くもってその通りだと言わんばかりに頷き、アルフ、クロノ、ユーノもそれぞれ言葉を変えて同意した。
 
「あらあら」
 
 その傍らで、爆発の時には流石に焦りを表情に出していたリンディ・ハオラウンが、今は、モニターの前でうんうん唸る五人の身の引き具合に面白おかしく、微笑んでいた。
  
「四人とも〜、大丈夫〜?」
 
『――ケホッケホッ! 一体全体何なんだよ?!』
『――ふぇぇ……大丈夫……れす、ケホッ』
『――あれ? あれ?? バルディッシュ?』
『…………不覚だ』
 
 
 本日の模擬訓練、全員墜落のため、終了。
 
 
 A'sの力量 後編 完

| 神八 | 08:04 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
こみけなの
 
 時は平成。年は二十。月は十二。日は二八、二九、三十の三日。地はお台場、名を東京ビッグサイトと。
 
 年に二度、夏と冬に一度ずつ開かれる祭典、コミックマーケット、通称コミケ。
 
 今回で七十五回目を迎えるそれを『C75』とも言う。
 
 
 この物語は、来る十二月二十八〜三十日に起こりえるであろう事をフェレットに協力してもらうことでその状況を表現しようという、もしかしたらこうなるんじゃねぇという憶測的な、架空物語(フィクション)である。
 
 
 
 十二月二八日午前六時、東京、国際展示場駅前。
 
「ユーノ君、西館は任せたの」
 
 朝の寒い空気を緩和するように、バリアジャケット姿の高町なのはが微笑む。
 
「わかったよ、なのは。ばっちりゲットしてくる。それで、どこのサークルの本を買ってくればいいんだい?」
 
 防寒対策ばっちりのユーノ・スクライアは、微笑みを微笑みで返し、任された“任務”の内容を聞く。
 
 その一言を聞いた高町なのはは微笑んだまま、財布を手渡す。
 
「ユーノ君が買うのは本じゃないの」
 
「え?」
 
 手渡された財布をインナーポケットにしまい込んでいる間に、今度は一枚の紙を差し出された。
 
「ユーノ君は企業ブースに並んでもらうの」
 
「企業ブース……か、うん。分かった」
 
「ちゃんと内容を確認するの」
 
 紙を受け取り、言われるがままに紙に書かれた文字を見つめる。ブース名は「©NANOHA The MOVIE 1st PROJECT ©なのはStrikerS PROJECT」だった。
 
「えぇと……ボーカル、ベスト……コレクション? スバ、ル、と、ティアナの、ロマンティックピローケース? なのはとフェイトのタスペトリー? 魔方陣……パーカー? 限定分は買えるだけ、限定無しは五つずつ? え? なんでなのはとフェイトの名前が? ていうか、スバルとティアナって誰?」
 
 身内の名前と、その写真がそこに書かれ、写っている事に焦りを隠せないユーノ。
 
 当然と言えば当然、なぜなら目の前にその本人がいるからだ。
 
 張本人高町なのはは、依然として微笑んだまま、一言。
 
「細かいことは気にしないでいいの。ユーノ君は全力全開でそれに書いてある物を手に入れてくればいいの」
 
 その笑顔の裏には修羅が宿っていた。
 
「わ、わかったよ。それじゃぁ、買い終わった後で会おうね」
 
 
 微笑む修羅と別れ、一人、西館に行く為の順路を辿るユーノは、絶句した。
 
「な、なんだこれ……」
 
 その、異常なまでの人の多さにユーノは呆然と立ち尽くす。
 
 ユーノは言葉が出ない。当然だ。一体どこから湧いてきたのか、その逆三角帽子の建物が見える、開けた順路には人、人、人。どこを見ても、人。そのあまりにも多すぎる人の数に圧倒されてしまったからだ。
 
 しばらく口をパクパクさせていると、スタッフと思われる人間が周辺に集まり始めた。
 
 そして彼らは叫ぶ。
 
「西地区、企業ブースにご用のある方はこちらに進んでくださーい」
 
「一度東に行ったら、西へ来るのは困難でーす。自分の進むべき道、自分の欲望を満たしてくれるブツがある方へと進んでくださーい」
 
「道を間違えたらそれ即ちデッドでーす。アライブしたい方は確実に、確実に進むべき道と方向を間違えないでくださーい」
 
「立ち止まらないでくださーい。押さないように、押されないように、前の人の後ろについていってくださーい」
 
「慌てないで下さーい。押さず走らず希望を胸に! 歩いてくださーい」
 
「大変混み合ってまーす。割り込み、追い越しは危険ですので禁止でーす。始まる前に終わりたくない方は前の方と歩調を合わせて、夢をあきらめずに歩いてくださーい」
 
「夢をあきらめたらそこで終わりです。マナーを守れない人もそこで終わりです」
 
 何か凄いことを言っているこの人たちの誘導によって、流れが出来たその場。そのど真ん中にいたユーノは有無を言わさず、流された。
 
「う……わ、わわわぁあぁ!」
 
 
 時は流れ――。
 
「全然列が動かないや……」
 
 列に並び始めてから約四時間が経った。少しずつしかすすまない列、そして防寒具の上から
も肌を貫くような寒風。
 
 身震いしながら漠然と立ち尽くしていると、
「おお! キタコレ!」
 
「ついにきたかー」
 
「ふんもっふ! ふんもっふ!」
 
 ざわめきと共に遥か向こうの彼方から音が近づいて来る。
 
 パチパチパチパチ! と、拍手という名の波が一斉に前からやって、来た!
 
「やべっ! こんな後ろの方で開場って……絶対買えねぇじゃん……しくじったなぁ……」
 
「先頭陣にいる友達に全て任せるとメール送ったんだけど……返事がねぇ」
 
「ここまできて売り切れは勘弁だ……頼むぜ、俺の運!」
 
 午前十時。コミックマーケット開場。
 
 その拍手はそれを意味していた。
 
 それと同時に、後列陣に不安のざわめきが現れる。
 
 それは、彼らの呟きが全てを物語っているため割愛。
 
「どうしたんだろう……周りの人たち。始まったばかりなのに」
 
 コミケ初参加、ユーノ・スクライア九歳。高町なのはについて来ただけの彼が、彼らの心境を理解できるはずもなかった。
 
 
 時は流れて。
 
「へ……へ……っくしゅ!」
 
 午後一時半、とある列の一角にはユーノの姿が。
 
 入場から三時間。なのはから頼まれたモノがある企業ブースは目の前に在る。
 
「や、やっとここまで来れた……」
 
 目標のブツを目前にして安堵の溜め息を一つ。と、ちょうどその時、西館の中から一枚の看板を持ったお兄さんが現れた。
 
 そして、看板を列に並ぶ衆に見えるように掲げて、叫ぶ。
 
「なのはプロジェクトにお並びの皆様方に在庫のお知らせでーす。本日分の在庫が残り少なくなってきましたー。恐らく今ココにいる列の方々あたりで在庫が切れるかと思われまーす。無くなり次第連絡報告をしたいと思いまーす。繰り返しまーす。本日分の――」
 
「ぇえ?! そんな! ここまできたのに……」
 
 不安を抱かざるを得ない一言に、心中が揺れる。もし、買えなかったら、なのはは一体どういう態度をとるのだろうか。考えただけで、寒さを超越した恐怖による震えが止まらない。
 
 
 そして、連絡が来る事無く、ユーノは企業ブースの中へ。
 
 目標ブツまであと三人。
 
「よ、よかったぁ……なんとか買えそうだよ」
 
 不安が少し和らぎ、再び安堵の溜め息をつく。
 
 さっとポケットから財布を取り出し、あと、一人。
 
 
「ありがとうございましたー、お次の方ー、どうぞー」
 
「やっと僕の番だ――ぇ?」
 
「はい。ちょっと止まってね」
 
 カウンターが一つ開き、呼ばれたユーノが歩き出そうとする直前、スタッフの人間がそれを止めさせた。
 
 なんだろう? と、首をかしげていると、その男がユーノも含めた列目掛け、こう叫んだ。
 
「ただいま本日分のグッズ、全て完売致しました! お並びの方にはご迷惑をおかけして申し訳ありません! 本日分のグッズは、全て完売致しました! 尚、CDのほうはまだ在庫が残っておりますが、やはり少ないので限定一とさせていただきます! ご迷惑をおかけして申し訳ありません!」
 

 
 午後三時、東館第一ホール入り口前。
  
 ユーノが柱に寄りかかるようにして座り込み、限りなくダークな空気を辺りに漂わせていると、それとは対照的な、はつらつとした声が前方から近づいてくる。
 
「ユーノ君。お待たせなの」
 
 ニコニコと笑顔で近づいてくるなのは。どうやら満足のいく買い物が出来たらしい。
 
「お待たせ」
 
 その隣には、なぜかフェイト・テスタロッサがいた。こちらの表情はなのはとは一変し、ユーノとほぼ変わりの無い、ダークな空気がフェイトの周りにも漂っていた。
 
「あ。なのは……と、フェイト? なんで」
 
 その疲れきった表情から、何かを察することが出来たが、あえて一応聞いてみることにしたユーノ。
 
「昨日、なのはに呼ばれて、ね」
 
「あぁ……なるほど、ね」
 
 あまりにも予想通り過ぎる答えに、なるほど、強制収集と言う奴か、と云々頷いていると、なのはが手を差し伸べてくる。座っている自分に手を貸してくれるのかと、ダークな気分を祓ってくれるのかと思い、ユーノも手を差し伸べる。
 
「違うの。例のブツをよこせっていってるの」
 
「あ、あぁ……ごめん、なのは……CD、一枚しか買えなかったんだ……」
 
「…………ふーん……そう、なんだ……へぇ…………」
 
 言葉を聞くと同時に、天使のような笑顔が見る見るうちに暗く、恐ろしいモノへと変わっていく。
 
 フェイトは、恐怖に引きつった顔で、眼を真ん丸くさせ、がたがたと震えている。一体全体どうしたというのか。
 
「な、なのは?」
 
 ユーノは首筋を掴まれ、ズリズリと、外へと向かって引きずられていく。その際に、何故かレイジングハートがバスターモードへと形を変えていた。
 
「れ、レイジング……ハート?」
 
『.....Good Luck』
 
 その、元相棒の杖から発せられた一言は、限りなく彼を恐怖のどん底へと導いたと言う。
 
「使えない奴はいらないの」
 
 ポイッと、まるでゴミでも捨てるかのように手を離す。そこは、海が直ぐ側に見える、何故か人気の無い一角だった。
 
「ぇ……ちょ……なのは――!」
 
「ディバインバスター!」
 
 ――轟と音が響く。それは、海を引き裂く一筋の光。
 
 その日、東京ビッグサイトの一角からピンク色の光と共に、何者かの断末魔が響いたと言う。
 
 
「ユーノ君、明日も西館に並ぶの。明日こそは絶対に手に入れてくるの」
 
「…………は……はい」
 
 
 こみけなの 完
| 神八 | 20:21 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
こみけなの アフター 完全版

 
 前回に引き続き――まだ書きます。だってコミケは三日間あるんですもの。スタッフの方々は四日間ですが。
 
 
 十二月三十日、午前六時。国際展示場駅前。
 
「ユーノ君、一昨日と昨日はお疲れ様なの。立派なの。使える子は大好きなの」
 
 前回、CD一枚しか購入する事しか出来なかったという失態により、高町なのはから究極のお仕置きをその身に刻まれたユーノは、次の日、つまりは二日目に名誉の挽回を果たす。前日買えなかったCD以外のほぼ全部を獲得してきたのである。
 
 高町なのは嬢(何故か嬢を付けなければならない気がした)はさぞ満足したかのようにそれらの戦利品を眺める。しかし、その満足げな微笑みは直ぐに無表情、そして、苛立ちを思わせるようなしかめっ面へと変わる。
 
「でも、まだ足りないの」
 
 先の説明でも語ったが、ユーノは“ほぼ全部”入手したのである。購入するものの約九割は確保したということだ。つまり、残りの一割がまだ入手出来ていないということになるのだが――。
 
「私のタスペトリーだけ足りないの」
 
 その一割と言うのが、一番に買っていなければならないものだったという事に気付いたのはブースから離れた後だった。
 
 慌てて戻るも入れてもらえるはずが無く。止むを得なく、高町なのは嬢の元へ戻ったのだ。その時は、仕方が無い、という事で制裁は無し。
 
 前回よりは良好な成績を示してくれたわけだから制裁を加えるわけにはいかなかった――というのは建前で、実はユーノのやる気を殺がない為だった。
 
 一応褒められてはいるので悪い気はしないユーノ。むしろ、俄然やる気が出てきた――今日こそなのはの期待に応えてみせるぞ! という若干空周り気味の意気込み。兎にも角にも、今日で最後。この期を逃すと次は無い。空回りでもいいと、戦場である企業ブース方面を睨み付ける。
 
「今日こそは手にいれてみせる。それじゃぁ、行ってくるよ!」
 
「あ、ユーノ――」
 
 なのはの横にいるフェイトが何かを言いかけていたが、それに気付くことなくユーノは西、企業と書かれた看板の横を過ぎ去っていく。
 
 
 ここ有明の海に面する逆三角帽子の建物が特徴の東京ビッグサイトは、コミックマーケットという三日間もあるイベントの中で、最も入場者が多いとされる三日目に差し掛かっていた。年を増すごとに参加者が増えるというこの一大イベント、今回はその中でも群を抜いているだろう。例年よりも遥かに多い参加者がその道々を進んでいた。
 
 一瞬、一日目と同じように、その数に圧倒されて漠然としたが、直ぐに我に戻り、並々溢れる人の間を抜けて、逆三角帽子の建物目指し走り出す。しかし、 
「はーい。そこのお嬢ちゃ〜ん。走らないでね〜」
 
 即座に注意を喰らう。しかも性別を間違えられて。
 
「お、お嬢ちゃん? ち、ちが、僕は――」
 
 思いもよらぬ一言にユーノはたじろぐ。たじろぐが、 
「っと、そうだ、お嬢ちゃん、ちょっと手を上げて」
 
「え? あ、はい。こうですか?」
 
 再び思いもよらぬ一言に、ただユーノは命じられるがままに手を上げる。スタッフに逆らったら、それ即ち死と考えてもいいと、高町なのは嬢に教わったのを思い出したからだ。それが真実なのかは定かではないが、それを信じるほかに、ユーノには何も無かった。
 
「うんうん。それじゃあそのまま……はーい! みなさーん! だんだんと混み始めているので今から誘導しまーす。この手を上げてる可愛らしいお嬢ちゃんの横に十人並んでくださーい。その後ろに続いてならんでくださーい。詰めてくださいねー! 混んできていますー! なるべく詰めてくださーい!」
 
 
「え?」
 
 よく分からないことになった。何がどうなっているのやら。とりあえず理解できるのは、誘導によって瞬く間に出来ていく団体の列のトップにいるということだ。
 
 ものの数分で、一個団体が出来てしまった。そして、それはそこで動かない。
 
 そんなこんなで、よく分からない状態が十時前まで続いた。
 
 十時といえば、開場の時間。
 
 焦りがユーノの中に生まれる。自分はまだ逆三角帽子の建物の下にすらきていない。
 
 パチパチパチ、と拍手と共に開場の知らせが響き渡る。
 
「は、始まった……買えるかな……いや、買えるさ。きっと!」
 
 自分に暗示をかける。自分は絶対になのはのタスペトリーが買えると。と、声に出していっていると。
 
「君、随分と勢いの良い女の子だね」
 
「熱血系少女か……うん。いいネ」
 
「いやいや、言葉使いがそうなだけであって、内心では凄く怯えている……そう、ツンデレとはそういうものだ」
 
「ツンデレ……熱血少女……それもまた、ありだな」
 
 周りの男たちがユーノについての妄想を膨らましていく。
 
「ぼ、僕は男です!」
 
 自分の顔立ちが女の子寄りなのがいけないのか。とりあえず、否定の言葉を叫んでみる。
 
「成る程……僕っこか……凄いな、最近の子供ってのは」
 
「熱血ツンデレ僕っこ少女……凄い、凄いぞお嬢ちゃん! 完璧だ! 完璧だよ!」
 
「落ち着けピザ。興奮しすぎだ」
 
「な、なんなんだよう。この人たち」
 
 
 更に訳の分からない状況が続くこと二時間。ようやくブース付近に辿り着いたユーノは深呼吸。
 
「あと、ちょっとだ。うん。多分買えそうだな」
 
 と、ココで再びあのスタッフが現れた。前回「在庫がうんちゃらかんちゃら」と言っていた、あのスタッフである。
 
 いやな予感が、ユーノの頭を駆け巡る。
 
 
「は〜い。なのはプロジェクトにお並びなられている皆様に在庫のお知らせでーす。タスペトリーの在庫が残り少なくなってきましたー」
 
 その一言は、ユーノを始めとする、列に並ぶものにざわめきを引き起こさせた。
 
「ちょ……嘘でしょ」
 
「……まぁ、そうだろうな」
 
「ぁー、もしもし? 無くなるってさ――」
 
 
 流石に三日目だ。一時間以上経っても在庫が残っているほうが奇跡なのかもしれない。
 
 そういう意味では、ユーノは運がいい。
 
「まだ、まだだ……終わったわけじゃない」
 
 
 そして十二時過ぎ。
 
 ユーノはいよいよ販売ブースの前に。
 
「や、やっと……ココまで来れたよ……」
 
「お……。お嬢ちゃん、今日も並んでいるのかい? 初日は残念だったねぇ」
 
 スタッフの一人がユーノに近づいてくる。初日でユーノの前に立ちふさがったあのスタッフだ。どうやら覚えていたらしい。何百何千と言う人がココを訪れている、いちいち他人の顔など覚えている余裕など無いはずなのにユーノの事は覚えていると言う。まぁ、大人に混じって子供が一人で並んでいるというのは、深く印象付けられるものがあるのだろう。
 
「ぼ、僕は女の子じゃ……って、それはもういいです。ええ。どうでも。それよりも」
 
 開き直って、来る自分の番を待ち焦がれることにした。
 
 
 
 午後二時半。東地区三番ホール出入り口。
 
 ユーノは柱に寄り掛かりながら高町なのはとフェイト・T・ハラオウンを待っていた。
  
「ユーノ君。お待たせなの」
 
 前日前々日と同じように、満足げな表情を浮かべる高町なのはがホールの向こうから近寄ってくる。その彼女の細い両腕には大量の収穫物が。
 
「お、待たせ、ユーノ」
 
 次いで現れたフェイトは持っている収穫物こそ少ないが、高町なのはのようにはつらつとした表情は欠片も無く、ただただ重力に引かれるようにペタリと床に座り込んだ。もの凄く疲れているのがその虚ろな目を見れば一目瞭然だ。
 
「う、うん。なのはは相変わらず元気そうだね。三日目なのに……フェイトは……あの、大丈夫ですか? 本気で」
 
「だ、大丈夫……大手サークルの列“だけ”に並んでただけだから……うん。大丈夫」
 
 絶対に大丈夫ではない。少なくともユーノはそう思った。大手に並ぶと言うことがいかに大変か。それは企業ブースと同等の、修羅場だからだ。
 
「ユーノ君。お疲れ様なの」
 
「うん。なのはもね。ほら、しっかり購入してきたよ。なのはの為に」
 
 なのはに、タスペトリー入りの袋を見せ付ける。これでもかッ! と言うぐらいに自信満々に。
 
 対するなのはは、目をそらし、口をモゴモゴとさせている。大変様子がおかしい。いつもの高町なのはらしくない。
 
 ユーノは喜んでくれると思っていたので、大変驚いている、と言うより恐怖している。自分は何か間違えてしまったのか、と。
 
「ユーノ、あのね、大変言いにくいんだけと……それはもう必要ないんだ」
 
 
 いつまで経っても口を開こうとしない高町なのはに代わり、フェイトが口を開く。
 
 聞かされた内容は、ユーノにとって信じられるものではなかったのは言うまでも無い。
 
 何故、どうして、何だって、そういう事を言うのか。検討もつかない。
 
「え?」
 
「お兄ちゃ――クロノがね、昨日買ってたんだ。いつの間に来てたんだか知らないんだけど」
 
 その瞬間、ユーノの中に「あのクロ野郎。何いけしゃあしゃあと人の役目取ってんじゃ」と悪念が誕生していた。
 
「へ、へぇ……それじゃあ、僕は、無駄足だったってこと……ははは」
 
 そう言えば、今朝、フェイトは何か言いたげな顔をしてたじゃないか。何でそのときに聞かなかったんだろう。
 
「とりあえず、貰っておくの。お疲れ様なの、よく頑張ったの」
 
「あ、うん」
 
 あのクロ助。一体どうしてくれようか、と、心中でフェイトの義兄クロノ・ハラオウンにどうやって制裁を加えてやろうか考えていると、
「頑張った子には」
 
 邪悪な考えをもみ消すかのようになのはは言葉を発し、ユーノに近付く。
 
「え?」
 
 ちゅっと、柔らかい唇がユーノの頬に当たると、区切った言葉の続きを一声。
 
「ご褒美なの」
 
 照れる様子も無くニコッとはにかむ高町なのは。唐突過ぎる御褒美にユーノは呆然としている。
 
 
「な、なのは……私には?」
 
「フェイトちゃんにもちゃんとするの」
 
 ちゅっと、柔らかい唇がフェイトの頬にも当たる。
 
「え、えへへ……」
 
 
 二人とも、その口付けでようやく解放されたと認識したのか、その場に崩れ落ちる。三日分の疲れがドッと押し寄せてきたのだ。
 
「「終わった……やっと」」
 
 
「…………二人とも、だらしないの。まだ戦いは終わってないの。まだ四日目があるの。明日は秋葉原に特攻なの」
 
「「……え??」」
 
 
 
 こうして、前日終了したコミックマーケットを題材にした架空物語をフェレットに協力してもらうことで状況を表現しようという、もしかしたらこうなるんじゃねぇという憶測的な、物語は無事完結。ようやく幕を降ろすのであった。
 
 
 こみけなの アフター 完結

| 神八 | 19:25 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
「ゴールデンツインヘアーたちの戦い」 サブタイトル「(違う意味で)なのはさんの死闘」

「アリサちゃん負けるなー!」
「どっちも頑張りやー!」
 
 金色の髪が二つ。太陽に照らされ風に靡き、キラキラ煌く。
 晴天の空の下行われている、体育という科目の持久走という名目の競技。
 アリサとフェイトは、 次々とくたばっていく同級生を横目に、緩まることのない猛烈な速さで一周二百メートルのトラックを駆けていた。
 
「――な、なかなか――やるじゃないフェイト!」
「――あ、アリサ――こそ!」
 
 六つもあるレーンの一番内側を負けず嫌いの二人は互いに譲り合うことなく駆け続ける。
 今、すずかとはやての二人の前にある線を踏み越えていったことにより、十五周目に突入。計約三キロを、未だに二人は全力で疾走中。
 勿論、両者共に既にバテバテ。体力の限界なんて既に超えていた。それでも走り続ける理由は、片方はプライド、片方はそれを賭けて走り続ける友人に対する礼儀、付け加えて、同じくプライド。
 
「っ――ふはっ――い、いい加減――疲れてきたんじゃない?! フェイト――」
「ま――まだまだ! ――全然、余裕だよ――っは――」
 
 
 アリサの持つ、クラスのまとめ役としての、五人のリーダーとしてのプライド。
 フェイトの持つ、修羅場を潜り抜けてきた魔導師としての、一般人に体力面で負けるわけにはいかないというプライド。
「お互い全く賭けているものは違う――が、しかしぃ! そのプライドとプライドの塊が今、激しく火花を散らしている! 一体どちらのプライドが勝つのか? それは誰にも予測できないサプライズ! 今、この世界では乙女の陸上競技が熱い――!」という実況がはやての心中で生まれ暴れているのは余談。
 
 
 どうしてアリサとフェイトが張り合っているのか――その理由は数十分前の、五人の会話に訳があった。
 
「フェイトちゃんとアリサちゃんって、似てるよね。雰囲気とかじゃなくて、後姿とか」
「か、髪の色が一緒なだけじゃない!」
「うんうん。わかるで〜。髪型同じにしよったら絶対わからへんもんなぁ」
「そ、そうなのかな? 私は自分で見れないからわからないよ」
「にゃはは。そうだね〜」
 
 ココまでは何気ない普通の会話。しかし、次の“何気ない”会話の中で発せられる、とある一言によって事態は急変する。
 
「そういえば次の授業、持久走だね。着替えないと」
「あかんなぁ。私、体力無いんよー。全然走れる気がせぇへんわ」
「はやては仕方が無いよ。無理しないほうがいいって」
「そういえば、なのはも体力無いわよね。はやてと違って特別体の調子が悪かったわけでも無いのに」
「にゃ、にゃはは〜。運動だけは……。あ。そ、そう言えば、アリサちゃんとフェイトちゃんって、どっちが体力あるのかな〜?」
 
 きっかけは、自分の窮地を脱するべく会話の方向を自分から二人の方へと移すために呟いた、なのはの一言だった。
 
「あ〜、私もそれ気になるなぁ」
「そういえば今まであんまり気にしてなかったね。どっちなんだろう」
「「それは勿論私――え? な、何言ってるの? 私に決まって――え?!」」
 
 全く同じ言葉、同じ反応を示す二人。どうやら二人とも全く同じ事を考えていたらしい。
 
 互いに、互いの言葉が聞き捨てなら無かったのか、フェイトとアリサは目と目で火花を散らしあっている。それはもう、互いに引くことを知らないかのように。
 
「うわぁー。見事に被ったでぇ、なのはちゃん。どうするんよ」
「う、う〜ん、どうしようか……って。私のせい?!」
「なのはちゃんがそういう話に切り替えたから」
「ぇぇぇ?! 二人だって賛同してたよね? あれ?! 何で二人ともそっぽ向くの?! あれぇ?!」
 
 (嫌な意味で)汗をだらっだらに流すなのはは救いの手を二人に求めるが、すずかとはやてはそそくさと体操着に着替え始める。
 
「なのはちゃん。気張りや。大丈夫。なのはちゃんならどうにか出来る。多分」
「多分?!」
 
 上だけ着替え、ポンと肩に手を置くはやての目は優しく、しかしどこか遠くを見つめている。
 
「そうだね。体張って頑張ればどうにかなるかもね。多分」
「体?! 多分?!」
 
 いつの間にか着替え終わっているすずかは、にこやかに微笑むと、サラッととんでもないことを言う(彼女の言う体を張ってというのは、その肉体を曝け出して彼女らに捧ぐ、という意味である)。なのはに悪寒が走ったのは言うまでも無い。
 
「「勝負よ!」」
 
「え? 勝負?」
「ほほぅ、なるほどそう来るかぁ……面白ぅなってきたでぇ」
「そうだねぇ。うん。それじゃあ決着がつかなかった時はなのはちゃんの体で決着をつけるって事で」
「おぉ! すずかちゃん、ナイスな考えや! ますます面白ぅなってきたでぇ」
「なのはちゃん。それが嫌だったら二人の勝負に参加して勝たないとだめだからねー」
「二人に勝てば二人はなのはちゃん“に”、二人に負ければ二人はなのはちゃん“を”、か……成る程……すずかちゃん。策士やな」
「うふふ、ありがとうはやてちゃん」
「え゛? ちょ、ちょっと待って、何で私の体を――あ! いつの間にか四人とも着替え終わってる?! 待って! 待ってよ! ねぇ――!」
 
 なのはの言い分は全く聞かれず。
 
 そして現在。体力皆無のなのはが体力馬鹿の二人に勝てるはずも無く、前半戦で撃沈。
 持久走なので最初から全力で飛ばす意味などほとんどないのである。
 それに気付けなかったなのはは今、疲れとは別に、あらゆる意味で撃沈している。
 
 
「――! ――っ――! ――」
「――――! ――! ――」
「あー、なのはちゃん。よかったなぁ。初めてはアリサちゃんとフェイトちゃんで」
「優しいからね。二人とも」
「……ぇ? 初めてって? 何言ってるの? 二人とも」
 
 ズズゥゥンと沈むなのはを意味深な言葉で起こし、はやてとすずかは指を指す。指先の向けられたほうへと視線を送ると、そこには、
「――ぜ、は――ぁ――も、もう。限界――」
「――――わ、私――も――」
 と、同時に地面に堕ちる二人の天使の姿が。
 
 
「と、言う事は、この勝負、すずかちゃんの勝ちやなぁ」
「え? すずかちゃん? 何で?」
「だって私、とっくに走り終わっているもの」
「え゛」
「という訳で、なのはちゃん。頑張って二人の相手をしてあげてね。前半戦で堕ちてるなのはちゃんに拒否権はないからしっかりとね」
「……え゛?」
 
「な、なかなか、やるじゃない……完敗よ、フェイト」
「こっちこそ、完敗だよ、アリサ……この後は、二人で頑張ろう」
 
 暑い太陽の下で、(暑さとは関係無い、違う意味で)止まる事の無い汗をだらっだらに流す、なのは。
 凛々しい顔でこれから始まる激戦を楽しみにしている、はやてとすずか。
 決着はつかなかったけれど充実感に満ち溢れている、これから始まる新たな激戦をさりげなく楽しみにしている、フェイトとアリサ。
 
 
「…………え゛?」
 
 
「ゴールデンツインヘアーたちの戦い」 サブタイトル「(違う意味で)なのはさんの死闘」 完

| 神八 | 18:01 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
チャイルド六課

 SSの前書き 兼 報告
  
 おはこんばんにちは〜。
 リリマジレポは前回の記事で書きましたが、改めまして、リリマジ6お疲れ様でした〜。
 
 
 更新が滞っていました〜
 なのはトライアングラー
 とらいあんぐるパーティ6
 に参加しようかと思いまして、ちょっぴり準備をしていたからです。ていうか応募しました。すいません。また調子に乗ってます。い、勢いがあるうちに色々参加しておかないと自分は怠け者なので直ぐに駄目になってしまうんですわぁ……。
 
 やたらと放置気味だったので時間を割いてSS更新したいと思います。
 以下短編SS(前半パート)。続きを読むで下の続きを読むことが出来ます。
 
 
 チャイルド六課

続きを読む >>
| 神八 | 20:23 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
チャイルド六課 二話

 
 前書き
 短編として書いていたのに気がついたら長文形式になってしまっていたので、急遽、誠に勝手ながら長編としました。と、言っても次の三話で話がまとまりそうなので中編といったところでしょうね。
 今更ですが、今作はヴィータが主人公です。ヴィータ視点なだけなんですけどね。
 
前回のWeb拍手のお返事
 >>続きが楽しみです
 ありがとうございます! 続きはこの後から始まりますですよ〜
 
 
 ではでは、続きを読むから、チャイルド六課 二話、始まります。
 
 
 チャイルド六課 二話

続きを読む >>
| 神八 | 21:07 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
チャイルド六課 三話(※2.5話)

 
 例によって一週間遅れて更新。大変申し訳ない。
 読んでくれた人、続きが気になるぜって人、とりあえずうpれと思っている方、お待たせしました。
 例によって今回で無事完結しませんでした(ぇ
 今回は極端に短いです。すいませんorz
  
 Web拍手のお返事
 >>続きはどうなってしまうのか…目が離せないです
 ありがとうございます〜。今回で無事完結しますよ!
 
 >>真犯人が某タヌキにしか思えないんですけど・・・あの人ならやりそうで。
 Σ(゜ω゜*)?! は、はわわわ……よ、読んでみればわかります!(どうしてこう察しの良い人がいるのかしら……(*´・ω・)……嬉しいじゃない)
 
 続きを読むで本編が始まります
 
 チャイルド六課

続きを読む >>
| 神八 | 22:34 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |

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