高町なのはの憂鬱 | 八屋
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高町なのはの憂鬱 (1)
 
 やれドラゴンだ、やれユニコーンだと、俗に神獣だか神龍などと呼ばれる得体の知れない生物が至る所に平然と住み着いている平和な田舎町なんてさっさとおさらばして、もっと過激でダイナミックな、激しく心を揺さぶってくれるような街に住んでみたいと思っていた。
 
「思っていた」というのだからそれはもう過去の話。
 
 今はそんな事を思えるほど悠長な生活は送っていない。送れていていない。送りたいのに送れない。送ることは多分無理、不可能。
 
 少なくともココ、「機動六課学園」にいる間は。
 
 
 悪魔って信じますか。そう聞かれたら、今の俺は即座にこう言い放つだろう。「信じます」と。
 
 天使って信じますか。そう聞かれたら、今の俺は即座にこう切り捨てるだろう。「そんな言葉、初めて聞いたよ」と。
 
 
 機動六課学園。小中高大とエスカレータ式のミッドチルダ最大規模の学園。
 
 魔導師を育てる学校だ。
 
 魔導師って何かって? 面倒だ、が。説明しないとわからねぇよな。仕方ない。いいか一回しか言わないからな。
 
 魔導師っていうのは、要するに魔法使いだ。御伽話にも出てくるだろう? 魔女とか。
 
 そういう奴を育てるのがココ、機動六課学園だ。
 
 あぁ。もちろん魔法が使えない奴だっている。そういう奴は一般クラスってのに分けられる。
 
 一般っつても、やっぱりココは魔導師教養主体の学校だからな。本当のところ、魔法が使えない奴がいるところじゃないんだ。だから、一般の奴らは教育の過程で武術を習わされる。
 
 何で武術かって? 本当に仕方ないな。親切な俺はもう少し説明してやることにしよう。
 
 魔法と対等に渡り合えるのは、最終的には人の力――非力な人間じゃ手も足も出ないが、そうじゃなかったら話は別。武術を覚えられれば魔法が使えなくてもそこそこ魔術師と渡り合えるだろ? 魔法使う前にやっちまえばいいんだから。
 
 要するに、だ。魔法が使えないなら己の拳で何とかしろっていうのが一般クラス。
 
 ん? そもそも何で魔導師を育てるのかって? そんなモン、世の中が物騒だからだろ? 自分の身は自分で守れってね。
 
 
 さて、一応自分なりに解釈をプラスした学校の資料を読み終わったので問題です。
 
 現在時刻は八時半を指しています。先に説明した機動六課学園の始業式が八時五十分から行われます。 
 
 私は現在、自宅の布団の上で寝そべっています。制服に着替え終えているわけでもなければ歯を磨き終わっているわけでもなく、朝食を食べ終えているわけでもありません。
 
 自宅から学園まではどんなに急いでも三十分かかります。
 
 ココからが問題です。どうすれば始業式に間に合うように学園に辿り着くことが出来るでしょうか。
 
 答え。
 
「無理だ」
 
 正解。
 
「転校初日に遅刻。俺もなかなかやるようになったな。さて、たらたら歩いていこうかね」
 
 無理なものは無理。潔く諦めて遅刻してやろうじゃないか。
 
 
 新品の制服に着替える。うん。似合ってない。なんだよこの紋章は。格好悪いな。
 制服に文句を言ってもしょうがない、と一息溜め息をついたところで、
「――ッ」
 何故か寒気がした。何だ? 何でこんなに鳥肌が立ってるんだ? 制服の生地が俺の肌に合ってないのか? いやいや、そんな事は無い。それとも風邪――じゃないよな、絶対。
 
 何で制服にケチをつけただけで悪寒がするんだ?
 考えたところでどうにかなるわけでも無いし、気にしない気にしない。
 淹れたてのブラックコーヒーでも堪能して忘れることにしよう。
 
 時計を見遣ると八時四十五分。確実に間に合わないな。
 
 コーヒーを一口啜ったら、遅刻の言い訳を考えることにしよう。
 
――――
 
 桜が舞う季節に転校っていうのも味があっていいと思う。皆が皆、新鮮な気持ちになっていることだろうし。俺みたいな余所者が現れるのを待ち望んでいる奴がいるかもしれない。邪険に思う奴もいるだろうが、初っ端から遅刻するような奴を無視することは無いだろう。
 
 堂々たる態度で締め切られた校門を乗り越え、とりあえずは職員室に向かうことにした。それよりも……どうして警備員が一人もいないんだ?
 
 強盗が入ってきたらどうするんだよ――。
 
「ビービー! 侵入者発見! 侵入者発見!」
「え?」
 
 何? 一体どうした?! まさか本当に強盗が?! いやいや。そんなご都合主義、俺は認めないぞ。ていうか、警報装置がついてるんですね。それなら警備員がいない理由もわかるんですが、やっぱり一人ぐらいいても良いと思うのですよ。
 
 さて、強盗はどこだ?
 
 若干野次馬精神を胸に振り返る。誰もいない。
 
「あれ? 誰もいねぇし。警報装置、誤作動でもしたか?」
「そこの人。止まりなさい――って、あれ? なんだ……高等部の子か」
「え?」
 
 後ろから若い女性の声。警備員の人か?
 
 振り返ってみると、近づいて来ていたのは一人の女子生徒だった。何故わかるって聞かれると、答えは一つしかない。学生服を着ていからだ。もし学生服を着ている一般の民間人、それも親父だったとしたら、俺は迷うことなく、有無を言わさず、心窩(鳩尾(みぞおち))に全力を超越した鉄拳を喰らわしているだろう。
 
 そうしなかったのは明らかにココの学園の生徒だとわかったから。
 
 今朝見た学校案内の中に生徒会役員の写真てのがあったんだが、その中に映っていた金髪の生徒と目の前にいる金髪の生徒が全くの一致だったもんで俺は頭の中で思っていたことを口に出していってしまった。
 
「生徒会の……フェイトって人だ」
 
 何で俺が高等部ってことが分かったんだ? って、制服についた紋章を見ればわかるのか。確か学年ごとに紋章の色が違うって案内にあったな。
 
 
「いかにも、私は機動六課学園総生徒委員会書記のフェイト・T・ハラオウンですけれども。君はこんな時間にこんな場所で何をしているんですか?」
 
 噛まずによくもまあそんなにべらべらと……。それよりも、写真でみるより、いや、写真で比べるのが失礼なのかもしれない。このフェイトって人、相当な美人だ。
 
 都会にはこんな人がいるのか。これは田舎から出てきて正解だったな――。
 
 などとそのに美貌に見とれていると、だんだんと困り顔に変化していく。いや。そんな顔のあなたも美しい――。
 
「あ、あの……聞いてますか? 君はこんな所で何を――」
 
 きりっとした、どこか威厳に満ちた態度だったのがだんだんと弱腰になっていく様、コレが噂の「最初は強気、だんだん気弱現状」なのか。こんなものを見れた俺はもう悶絶寸前だ。
 
 しかし、流石にいつまでも見つめているわけにもいかない。ココはすっぱり言ってしまうのがいいだろう。
 
「遅刻しました」
 
 俺の簡潔で分かりやすすぎる返答にたじろぐフェイトさん。
 
「い、いや、見ればわかるよ――こ、コホン! 見ればわかります」
 
 凄いなこの人。やばい。大好きかもしれない。
 
「どうやって校門を越えたんです? 学生証を門の横の認証機に翳せば防犯装置は作動しなかったのに」
「普通に乗り越えました」
「ふ、普通にって……」
「俺、今日初登校でわからなかったんです。すいません」
 
 とりあえず、良い子ぶっておこう。あんまりこの人を困らせたくない。
 
「え? あぁ、君が例の編入生……。そ、そういうことなら、ま、まぁいいです。今後は気をつけてくださいね」
 
 例のってなんだ? まぁ、お咎めは無しっぽいし、良かった良かった。
 
「それじゃあ、ええと、あれ? どこだっけ……ええと」
 
 何ですか。一体。言う前に忘れないで下さい。あぁ、困った表情、イイですね。可愛いです。
 
「こ、コホン。理事長室に行きますよ」
「理事長室? 教室に案内してくださいよ」
「り、理事長が呼んでるんです! 兎に角! ついて来て下さい」
 
 怒った顔もなかなか。仕方が無い。ついて行くことにしよう。どうせ教室の場所も職員室の場所もわからないんだし。
 
「あ、そうそう。理事長と、それから生徒会長には逆らうような発言はしないで下さいね。お願いですから」
「…………はぁ、わかりました」
 
 何のことだろうと、軽い気持ちで了承した俺は後に後悔することになる。ここで理事長と生徒会長のことを聞いておけばよかったと。
 
 
 高町なのはの憂鬱 (1) 完
| 神八 | 22:19 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
高町なのはの憂鬱 (2)

 
 フェイトさんの後ろに付いて歩くこと早半時間。一体どこまで歩かせるんだこの姉ちゃんはとイライラし始める短気な俺は深呼吸することによって苛立ちを抑えることにした。
 
 スーハースーハー。うん。良い感じにイライラしてきたぞ。こんなことして苛立ちが無くなるなら魔法なんかいらねぇよ。一人でボケて突っ込む自分が馬鹿みたいな存在に思えてきた。もう考えるのは止めよう。
 
 しっかし。一体全体この学園はどういう構造をしてるんだ。進めど進めど、延々と続く廊下。終わりというモノが無い。壁にぶち当たると言うことが未だに一度も無い。どういうことでしょうかコレは。ある種の防犯対策ですかね。だとしたら素晴らしいですよ。でもね、一つ言わせてください。生徒が面倒臭い。――ふぅ。よし、ココまでの道のりを思い出してみることにしよう。俺の暇つぶしのために。
 
 
 フェイトさんに連れられて、まず昇降口だ。そこに行った。で、そこに入る。そこには下駄箱があったんだが靴は脱がなくていいらしい。下駄箱の意味が無い。何故置いた? 疑問をフェイトさんにぶつけてみたが、
「な、なんでだろう……私も知らないよ」
 と、予想の斜め上を越える返答が返ってきた。生徒会の役員が何でそれを知らないんだ。フェイトさんを困らせるのは俺の男心が許さなかったので「そうすか」と、そこで話を打ち切った。俺って紳士だな。
 
 話がずれちまった。大いに結構。下駄箱を文字通り素通りして、下駄箱の真正面にある階段を上る。階段の横のほうに売店らしきものがあった。後で行ってみることにしよう。
 
 四階まで上るともうそれより上の階に続く階段は無かった。どうやら四階建てのようだ。
 
 と、廊下を進みながら思っていると、別の階段に差し掛かった。下に降りる階段は無い。フェイトさんは当然のように上り始める。
 
 おいおい。エレベーターって奴を取り付けるべきじゃないのか? 愚痴っている間に八階。それ以上上に続く階段は見当たらない。よし。ココが最上階だな。
 
 流石に階段はもう無いだろうと油断したところで再び階段登場。意味が分からない。
 
 更に上り続け、一二階。成る程。四階ごとに階段の上り口が変わるらしい。このノリで行くと多分まだ上があるんだろうな。そう思うと絶望せずにはいられない。だが、希望は捨てたくない。フェイトさんに聞いてみることにした。
 
「フェイトさん。まだ上があるんですか?」
 
 神よ。生まれて初めてあなたにお願いをします。どうか、ノーと言うようにフェイトさんの脳ミソを変えちまってください。
 
「え? えぇと、この階で上るのはお終い。ここは十二階建てなんだよ。あ。十二階建てなんです。覚えておいてください」
 
 なんということだ……神は実在した。生まれて初めての願いをかなえてくれるなんて……。半信半疑、いやもう神なんていないだろうと思っていました。すんません。ごめんなさい。俺を許してください。今ならあなたを信じられます。神よ。ありがとうございます。
 
「そうですか。ていうかもうちっと楽な移動手段ってないんですか?」
「え、と。移動手段は歩きだけ。学生のうちから楽を選んではいけないと現理事長がお決めになられて、移動手段が歩きだけになったんです。今年から」
 
 ジーザス。十二階建てなのに移動手段が歩きだけだと? 神よ。前言のお願いは撤回します。フェイトさんの脳ミソを元に戻してください。そして撤回する代わりに移動手段を増やしてください。
 
「そ、そんなに落ち込まないで。歩き以外にも方法があるにはあるよ」
 
 神よ。ありがとうございます。あなたは本当に優しい――。
 
「ええとね、外からよじ登るんだ。ロープを使って」
「一二階をロープで? …………」
 
 神よ。あなたは本当に酷い人だ。どうして俺を幸せから地獄のどん底に突き落とすようなことばかり……。もういいです。あなたには失望しました。
 
「じょ、冗談だよ冗談。ほら。目の前に扉があるでしょ?」
「はぁ……まぁ、ありますね。あれが壁に見えたら眼科に行ったほうが良い」
「あ、うん、そうだね」
 
 そうだねってフェイトさん。俺の軽い冗談を真に受けないで欲しい。が、可愛いので許す。
 
「い、いや、そうじゃなっくてね。あれ。エレベーターなんだ」
 
 ほほうエレベーター。素晴らしい。神よ。先程の失言、誠に失礼した。あなたは実に素晴らしい人、いや、神だ――って。
 
「エレベーターあるんなら乗りましょうよ?! 一階の時点で!! なんだって上りきってからそういう重要なことを言うんですか?! 仕舞いにゃ怒りますよ?!」
「も、もう怒ってるよぅ……そ、それに聞かれなかったもん……私のせいじゃないもん」
 
 た、確かに、聞かなかった。が……ぐっはぁ。悩殺もんだなおい。可愛いよフェイトさん。でもね、そんな、しゃがみこんでビクビクせんでもいいじゃないですか。殴りゃあしませんよ。美人を殴るだなんて、そんな下劣なことしません。
 
 ていうか俺みたいな凡人相手になんでそんなにびびってるんですか。異常ですよ。
 
「まぁいいです。エレベーターがあるってわかっただけでもめっけもんです」
「……怒ってない?」
 
 なんだコレ。あなた、この学校の生徒会の人ですよね? 編入生相手にびびってるんじゃありませんよ。そんなんじゃ生徒会役員としてやっていけないですよ! いいですか、もっと自信を持ってですね――。
 
 と、涙目で上目遣いのフェイトさんに言えるわけがない。止めて、そんな目で俺を見ないで。
 
「怒ってねーです」
「よかった。へへ。君、私の友達に似てるね」
「そうなんすか。それはどうも。じゃ、行きましょ。もう歩くのもかったるいです」
「や、やっぱり少し怒ってる」
「怒ってねーですって」
 
 ほほぅ。俺に似ている奴がいるのか。一体どんな奴なんだろう。会ってみたいな。
 
 と、半ば心浮かれるとフェイトさんは立ち上がり、
「こ、コホン。それでは、行きましょう」
 
 だってよ。俺はそのフェイトさんの態度の変わりっぷりが面白おかしくて後ろでくすくすしていた。
 
 
 はい。回想終了。
 
 こんなに長ったらしい回想をしていたというのにまだ目的地には辿り着きやしない。
 
 どうなってんだ、このフロアの構造は。
 
「フェイトさん。まだっすか。もう一時間ぐらい歩いてる気がします」
「そ、そうだね……」
 
 何ですかその返答は。まるで迷子になった子猫ちゃんみたいな言動でしたよ。
 
「まさかとは思いますが、迷ったんですか?」
「ギクゥ! そ、そんなわけあるわけないじゃない。やだなぁもう。編入生君は…………」
 
 面白いぐらい分かりやすい反応をする人だ。よし、睨み付けてやろう。
 
「………………」
「…………はいはい。そうですよ。迷いました。迷いましたよーだっ!」
「………………」
「……ごめんなさい」
 
 本当に面白い人だな。しかし参ったな。生徒会役員も迷っちまうようなだだっ広い学校なのかよここは……――いや待て。確かココまで道のりは一本道だろう。途中に分かれ道なんて無かったし。
 
 ……迷いようが無いッすフェイトさん。
 
 
「お、いたいた。フェイト、何をやってるんだそんな所で」
 
 途方に暮れるフェイトさんの向こう側から男の声。フェイトさんに被って姿が見えない。
 
「あ。お兄ちゃ――クロノ総書記。よかったぁ。ちょうどいいところに」
「ちょうどいいって……また迷ったのか……ん? そこの、君は……あぁ。例の編入生君だね」
 
 なんだこいつ。いきなり現れてフェイトさんに抱きつかれて。何者だろう。……ってフェイトさんが言ってましたね、総書記って。こいつも生徒会の人間か。
 
 いや、そんな事はどうでもいい。そんなことよりも、こいつも俺のことを例のって言ったな。どういう意味だ?
 
 聞いておくべきか?
 
 いや。いい。気にしない。気にしたら駄目な気がする。
 
「しかし、良かった良かった。警報が鳴って出て行ったっきり戻ってこないから何か起きたのかもしれないって心配してんだよ。――よし。それじゃあ理事長室に行こうか」
「はぁ」
 
 なんでこいつはこんなに爽やかなんだ? …………気持ち悪い。
 
 それにしても、ようやく理事長って奴に会えるんだな。良かった、本当に良かった。
 
 そして十秒後。
 
 俺たちは理事長室の前に辿り付いた。
 
「近っ!」
「あれぇ?」
「はっはっは。理事長室はエレベーターの横だ」
「何ぃ?!」
 
 
 どうやらこの建物は円形に建てられているらしい。俺の言いたいことが分かるか?
 
 つまり、俺たちはグルッッッッッッと一周、このフロアを歩いてきたって事なんだよ。
 
 あまりにも建物が大きすぎて廊下が直線に見えたために気付かなかったんだな。どんだけでけぇんだ一二階。いや、この学園。
 
 一時間強無駄にウォーキングしたことが分かった俺とフェイトさんはドッとその場に座り込んだ。
 
 なんにしても、ようやく理事長って奴に会えるらしい。
 
 改めて、よかったよかった。
 
 一分後。
 
 俺は全力をで自分の教室に向かう羽目になる。
 
 理事長が俺の配属されるクラスに向かったらしい。二分前に。
 
「ちくしょぉぉっぉおおおお!」
 
 無駄足でした。
 
 
 高町なのはの憂鬱 (2) 完    (3)に続く
 
 
 
 
――――
 
 
 〜あとがきという名の言い訳〜
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| 神八 | 00:30 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
高町なのはの憂鬱 (3)

 
 体力が削られていくのを我慢して一二階まで上りきり、しかし再び一階へ戻ることになった俺は怒っていいだろうか。いいよね。しち面倒臭い思いをしてきたと言うのにそれは全くの無駄。いや。無駄じゃないんだけどね。
 
 フェイトさんが間違いを起こさなければ一発で会えたんだ。言っちまえばフェイトさんのせい。でも紳士な俺は怒らない。だって美人だから。
 
 フェイトさん贔屓(ひいき)してても仕様が無い。教室を探さないと。
 
 教室はこの建物には無い。どういうことかって? そのまんまだよ。この建物に“生徒用”の教室は無いんだ。ココは職員、それと生徒会の建物なんだってよ。凄いね、権力にモノを言わせている。
 
 改めて下から見てみると、スケールが違うことがわかる。だってよ、端から端がもの凄く離れているんだぜ。横幅だけで一キロ超えてるだろ。奥行きは言わずともわかっている。一周したからな。あれだ。一言で言ってしまえばドームだ、ドーム。わかるか? 分かるだろう。分かってくれ。そんぐらいデカいんだ。
 
 俺はコレを「職員塔」と名付けることにした。
 
 さて、そんなことはどうでもいい。早いところ教室を探さないと……。あ、理事長か。
 
 確か教室のある建物が並列して建っているってフェイトさんが言っていたな。どこだ?
 
 権力者達の住まう職員塔がコレだけでかいんだ。数では教員数を遥かに圧倒している(はずの)学生の建物がコレに劣っているわけが無いだろう。きっと同じぐらいにデカいはずだ。なにせ、小中高大という全てが集結している学園だからな。
 
 期待を胸に、いざ探そうと視線を権力者達の住む職員塔の屋上から右斜め下に下ろしていく。その途中で、ソレに隣接するようにして建てられた建物が視界に映る。
 
 おお。これが俺の目指すべき教室がある建物か。成る程。職員塔に負けず劣らず、大き……くない。小せえ。四階までしかねぇ。なんだって。ココに学生全員が押し込められているとでも言うのか?! 窮屈極まりないだろうが。
 
 馬鹿な。いや。気のせいだ。うん。普通の学校となんら変わりが無いようにしか見えないのは一時的な気の迷いによるモノのせいだ。
 
 隣接と言いつつ大分と距離があるのも気のせいだ。
 
 遠近法って奴ですかね。職員塔が余りに大きすぎて「学生塔」(と名付けることにした)が職員塔の真横にあるように見えてしまうんですよ。何が隣接だ嘘つき。理事長って奴に会ったらまずこの事を突っ込ませてもらうぜ、
「これがミッドチルダ一の学園なんですね。凄く小さくてびっくりしましたよ」
 ってな具合に。
 
 よし。早いところ理事長を捕まえて話って奴をつけさせてもらう。
 
 
――――
 
 
 意外と距離があるんですね。びっくりです。なんですかこの職員塔と学生塔の間にある空間は。馬鹿みたいに広いじゃないですか。
 
 ゼェハァ息を荒げながら走ること五分。ようやく学生塔にたどり着きました。どんだけ広いんだ馬鹿野郎。
 
 
「――む? 貴様。このような場で何をしている。危うく踏みつけるところだった」
 
 絶望的なまでに長い塔間を走りきり、
「全力で走りきりました。ので、休ませてください」
 と言わんばかりに学生塔の前で死んだようにくたばっていると、女性の声が。
 
 見上げると怪訝そうな面立ちで俺を見下す、紫色の長い頭髪をポニーテールでまとめる長身の美人さんが映る。スカートを穿いているが、中はぎりぎりの所で見えなかった。ちっ。
 
「あぁ、すんません。理事長を探していたら疲れたんで休んでいたんです」
「理事長? 理事長ならそこですれ違ったが…………そうか、君が例の編入生か」
 
 おういえ。理事長がそこにいるんですね。今すぐにでも追いかけたい。でも無理。足が疲れて動かない。畜生、まだ追いかけっこが続くのか。
 
 ていうか、また例の。例のってなんですか。どうしてここの学園の人間は人に疑問を持たせるような発言をするのか。
 
 この人、学生ではないようだ。学生服を着ていないからな。と、なると、先生か? 先生なのか? 先生でいいや。こんなところにいる人間が生徒と教師以外にいてはならない。というわけであなたは先生です。 
 
 
「どうして俺が編入生ってわかったんです?」
 
 今まで触れないでいた「気になっていた疑問」を起き上がると同時に問うてみた。「例の」ってのも気になるが、何も言っていないのに一発で編入生と見て取られることが気にならないわけが無い。
 
 その「例の」って奴はその後に聞けばいい。さぁ、訳を言ってください。紫髪の美人さん。
 
「君の顔は見たことが無い。それだけだ。違ったか?」
 
 いいえ。合ってます。俺は編入生です。
 
 ですがね、当て方に問題があると思います。俺だからこそそこまで驚いていませんけどね、普通の人なら「嘘?! まじで?!」的な発言の連発ですよ。あなたは神ですか? 全校生徒の顔を覚えているみたいな発言でしたけど。ということは、フェイトさんと、クロノ? って人も同じなのか? 恐ろしい。いや。嘘だろ。絶対嘘だって。
 
「……ところで、理事長を追いかけなくていいのか? あの人は足が速いぞ」
 
 そんな事言われても、こっちは疲れてるんですよ。無理言わんといて下さい。
 
「でーじょーぶですよ。俺が所属する予定の教室に向かったらしいんです、理事長」
「そうか。教室の場所はわかるのか? 初めてなんだろう?」
「あ」
 
 しまった。場所を聞くのを忘れてしまった。しっかりしろよ俺。
 
「…………仕方が無い。案内してやろう――っふん」
 
 途方に暮れる俺をひょいと持ち上げお姫様抱っこ。あれ?
 
「ちょ……何を!」
「疲れているのだろう? 私が案内がてら教室まで運んでやる。それに、あの人は気が変わりやすいんだ。こんな所でタラタラしているとどこかへ行ってしまう」
 
 成る程。理事長は短気なんですね。だからフェイトさんは俺に理事長には逆らうなって言ったんだな。短気は損気ですよ、理事長。
 
 しかしこの格好は恥ずかしい。フェイトさんには見られたくない。
 
「自分で歩けますって!」
「気にするな。ちょうど私も理事長に用がある。それに少しばかり体を動かしておきたいと思っていたところだ」
「最後の意味が分かりませんって!」
 
 男の俺を軽々持ち上げるなんて、なんてたくましい人なんだ。こんなか細い腕のどこにそんな力があるってんだ。いや。その前に恥ずかしく無いんですか? 貴女は。あらゆる意味で驚きが隠せない。
 
 凄くカッコイイですよ。ええ。女なのに凄く格好良い。俺は俺が男であることに自信が無くなってきた。
 
 
「確か……君の所属する教室は、四のSだったな」
「何で知ってるんですか?! ていうかSって何ですか?! そんなにクラスがあるんですか?!」
 
 ツッコミ所が多くて嬉しいね。間に合わないや。
 
「私が君のクラスの副担当だからだ」
 
 な、なんだってー。と、驚く気力が俺には無い。
 
「そうだ、名乗り忘れていたな。私の名はシグナム。君の名は知っているので言わなくて結構。では行くぞ」
 
 急展開。え。ちょっと。そこは名乗らせて下さいよ。それよりもそういうのはクラスの自己紹介の時に言うもんでしょう。今ココで名乗らないで下さい。
 
 
 シグナム……先生か。先生。予想通りだな。
 
 俺は、お姫様抱っこという、男がされたらあまりの羞恥心で死んでしまいそうになるアクションをあえて気にせず(気にしないようにしている)、スタスタと早足で歩くシグナム先生の腕の中で一眠りつくことにした。
 
「おい。寝るな。落とすぞ」
「寝てません」
 
 
 
 高町なのはの憂鬱 (3) 完
 
 (4)に続きます。多分。
 
 
 
 
 〜あとがき みたいなもの〜
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| 神八 | 22:07 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
高町なのはの憂鬱 (4)

 
「おい。起きろ」
 
 心地良い温もりと振動の中を駆け抜けるように誰かの声が聞こえる。
 
 どうやら俺は寝てしまっていたらしい。半目の更に半分だけ目蓋(まぶた)を上げると、シグナム先生が呆れ顔で俺を見つめていた。
 
 うん。この心地良さ。もうしばらく味わっていたい。俺は寝た振りをしようと思う。
 
「……かー……」
「起きろ」
「……すかー……」
「レヴァンティン」
『Ja』
 
 いや。待て。待って下さいお願いします。
 
「起きてますよ。起きてますって」
 
 前半は寝てたけど後半は起きてましたよ。本当です。だからそのデバイスをしまってください。お願いします。
 
 それにしても、俺をお姫様抱っこしている状態でどうやってデバイスを出したんですか。素朴な疑問が心中で渦巻く最中、シグナム先生はゆっくりと俺を降ろした。
 
「ありがとうございます。いやぁ実に良い心地でした。最初の羞恥心なんかどっかに吹っ飛んじまってました」
「……全く、寝るなと言ったのに寝る奴があるか」
「はっはっは。いいじゃないですか。次は俺が先生を抱っこしてあげますよ」
「…………良い度胸だ」
 
 あれ。冗談のつもりだったんだが。まさか本気にしてませんよね。
 
 照れるなり怒るなり、そういったリアクションが欲しかったのに。まじめに受け止められると俺が気まずくなるじゃないですか。この人にこれ以上余計なことを言うのは止めにしよう。
 
 
「で、シグナム先生。ココが俺の所属する予定のクラスですか? また随分と荒れてるようなんですが。教室が。騒ぎ声がココまで響いてきますよ」
「始業式が延びたおかげでうっぷんが溜まっているんだろう。騒がしいのはいつものことなんだがな」
 
 始業式か、存在を忘れていた。家を出た時点でとっくに九時まわってたし、そもそも出席しようとも思っていなかったから覚えていないのは仕方が無いといえば仕方が無い。
 
「始業式。終わったんですか。いやぁ、俺遅刻して出席してないんすよ」
「知っている。その遅刻のせいで始業式が延びたんだ」
「はい?」
「我が学園では、新編入生は始業式で舞台挨拶をすることになっている」
 
 なんという画期的いじめ。いきなり全校生徒の前に出て話せってんですか。どんな羞恥プレイだよ。
 
「拒否権は無いんですか?」
 
 半ば期待を込めて言ってみる。先生。俺の期待に応える返答を一つお願いしま――。
 
「無い。なに、簡単な自己紹介をすればいいだけの話だ」
 
 簡単に切って捨てられました。
 
「そんなに簡単に言われても、恥ずかしすぎるじゃないですか」
「それを私に言ったところで君に拒否権が生まれる訳でもない」
「ま、でも始業式は終わったんでしょう? もう俺には関係の無い話――」
「いや。始業式は明日に延期された。残念だが君の望むような話にはならない」
 
 俺一人のために始業式を延期してくれるんですね。なんて暇な学園だ。
 
 そんな無駄なことをするぐらいならいっそのこと休みにしてしまおうぜというのが俺の意見なんだがソレを伝えるとあの切れ味が素晴らしいぐらいに良さげな得物でぶった切られかねないので言わないことにする。
 
「……帰っていいですか?」
「理事長に会いに来たのだろう。目標を前にして引き返すなど騎士の端くれにも置けん奴だ」
「騎士じゃないです。田舎者です。田舎者の俺はさっさと家に帰って風呂にでも入りたい気分なんです」
「いいから入れ。面倒だ」
 
 意味が分からないです先生。
 
 
――――
 
 
 ガラッと立て付けの悪い教室の引き戸を開ける。
 
 視界に飛び込むように映ってきたのは、文字通り、俺に向かって飛んでくる鳥のような竜のような白い生物だった。その後ろにはその白い生物を追いかけているらしい、ピンク髪の小さな少女。
 
「む」
「フリード!」
「ギャウ!」
「ぬはっ!」
 
 疾風の如く、先行していたシグナム先生はサッと身をかわし、少女は涙目でその白い生物の名(であろう)を叫び、駆け、俺はと言うと白い生物と激しくぶつかり合い、廊下に吹っ飛んだ。更に追い討ちをかけるように引き戸のレーンの隙間に足を引っ掛けた少女が俺の腹部、しかも心窩(鳩尾(みぞおち))に会心の一撃ともいえる突進を決めた。
 
 ふぐは。痛ぇ。何だって俺がこんな目に。
 
 はっ。まさか、始業式を延期させた俺に対する嫌がらせか? 転校初日、いや、まだ何も始まっちゃいないのにいきなりいじめ発生ですか。これは酷い。
 
 それにしても、視界が真っ暗なのはどうしてだろうか。そして何か柔らかい、フニフニした感触。そして、そしてとてつもなく息苦しい、重量感。
 
「んむ?! んむーー?!」
「ひゃ――ひゃぁ! ご、ごめんなさい!」
 
 パッと視界が開け、呼吸が出来るようになった。どうやら少女が俺の顔に乗っていたらしい。と、なると、あのフニフニした感触は、まさか……。
 
「痛つ……ッォ!?」
 
 あの感触をもう一度思い出そうと頑張るが、思い出せない。
 
 俺は頭を全力で床にぶつけたらしい。もの凄い勢いの頭痛が俺を襲う。あれだけの衝撃だ。頭にたんこぶが出来てもおかしく無いだろう。痛みを和らげようと頭をさすろうとすると、頭に何かが落ちて来た。ズシリ。
 
 やはりたんこぶが出来ていたらしい。そこに何かがジャストミート。俺はあまりの痛みに悶絶。
 
「ぅぉぉぉぉぉぉッッッッッッッッッ!!」
「ギャウ!」
 
 痛みを堪えながら頭に乗るものを掴むと、それは白い生物だった。いやいや。ギャウじゃねぇよ。
 
「だ、大丈夫ですか?!」
「大丈夫じゃないです」
 
 どこをどう見て大丈夫だというんだいお嬢ちゃん。心窩(鳩尾(みぞおち))に会心の一撃を決められ頭部にはたんこぶまで作った人間のどこをどう見たら大丈夫だという判断を下せるのでしょうか。
 
「す、すいません。ちょっと目を離した隙にフリードが逃げちゃって」
 
 フリード、というのはこの白い竜……竜じゃないか。何だってこんなところに竜がいる? おいおい俺の後ろに回りこんでんじゃねぇよ。一体どうした。
 
「あ、あれ? 珍しいな、フリードが知らない人に懐くなんて」
 
 懐いているんですか。コレ。
 
 それよりも、その手に持っているものは何ですか。
 
「……リボン?」
「え? コレですか? その、コレをフリードにつけたら可愛いかなぁって思って……そしてら暴れ出して」
 
 それだよ。ソレのせいで逃げたんだよ。
 
「いや、それは、流石に似合わないと思う」
「そ、そうですか?」
 
 シュンと落ち込む少女。いや。落ち込まれても困ります。シグナム先生。見てないで助けてください。とりあえず、ええと、フリード。お前俺から離れろ。
 
「ギャウ! ギャウ!」
「ええい! 纏わり付くな!」
 
 俺がフリードとじゃれていると見て取ったかシグナム先生は俺を放置し、へたり込む少女の下へと行く。
 
「理事長は……いないか。キャロ・ル・ルシエ、理事長を見なかったか?」
「ぇ、と、さっきまでいましたけど、直ぐにどこかに行ってしまいました。誰かを探しているみたいでしたよ」
 
 ピンク髪の少女はキャロちゃんと言うらしい。自己紹介をする前に名前が分かってしまうっていうのは何かのフラグか。
  
「ふむ、そうか……わかった。おい。いつまでじゃれている。行くぞ」

 これでじゃれているように見えるのか。頭かじられてますよ、俺。
 
「きゃ、キャロちゃん! こいつを剥がしてくれ! 痛、いだだだ!!」
「な、何で私の名前を知っているんですか?!」 
 
 おいおい。冷静に考えてくれよ。つい今さっきシグナム先生が君の名を呼んだだろう。
 
「あ、シグナム先生! 委員長、見ませんでしたか?」
 
 俺とキャロちゃんがぎゃあぎゃあ騒いでいる最中、赤毛の少年が教室の中から現れた。
 
 あれ? 俺って確か高等部だよな。何で小等部にしか見えない子供が二人(キャロちゃんを含める)も俺のクラスにいるんだ?
 
「ティアナ・ランスター? いや。見ていないが、どうかしたのか?」
「スバルさんとギンガさんがウイングロードを使って逃亡しちゃったんですよ。ひとっ走りしてくるとか言って。だから委員長に止めてもらおうかと思ったんですけど」
「あ……ティアナさんならさっき理事長と一緒にどこかに行っちゃいました、先生」
「むむ……どいつもこいつもじっとしていられない奴らだな……」
 
 ……なんだか問題児の多そうなクラスだな。聞いてるこっちは不安になってきたぜ。
 
「エリオ、キャロ、二人で職員室まで行って先生を呼んできてくれ。私とコレは理事長を追う」
 
 コレって……随分な扱いだな。
 
 そして、赤毛の少年はエリオと言うらしい。
 
 全く……、この瞬間だけで五人の名前を知る羽目になったぞ。三人ぐらい顔合わせて無いけど。
 
「わかりました!」
「はい! 行こう、キャロ!」
「うん、エリオ君! あ、フリードのこと、お願いしますね!」
 
 さりげなく何かを託しキャロちゃんはエリオ少年と仲良さげに手を取り合い、廊下の向こうへと走り始めた。せめて頭から引き剥がして欲しかった。
 
「行くぞ、もたもたしていられない」
 
「一人で行ってください。俺はもう疲れました」とは言えず。
 
 教室に入る事無く、再び理事長探しに出ることになった俺は一体いつになったら理事長に出会えるんだろうか。
 
 
 
 高町なのはの憂鬱 (4) 完
 
 
 
 〜あとがきみたいなモノ〜
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| 神八 | 01:26 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
高町なのはの憂鬱 (5)

 
 学園塔内における理事長捜索部隊が設立されたのはほんの五分前の話。
 
 シグナム先生の一言、
「理事長を探し出してくれ。早急に家に帰りたくば、だ。――私の言葉の意味、わかるな?」
 
 校内放送という究極の人探し法。先生がマイクに向かって放った一言が学園内に響き渡ると、一秒後にもの凄い揺れが起き、そして学園中からガタガタガタという騒音に近いそれが響き渡った。
 
「サーイエッサー!」
「サーイエッサー!」
「サーイエッサー!」
 
 不気味な掛け声が学園内から響き渡る。防音対策万全であるはずの放送室にまで音が伝わるのだからその音量といったら並のものではない。
 
 集団で兵士の怨霊にでもとり憑かれたかのような忠誠心、意気統合。 なんだぁこりゃあ。生徒が次から次へ学生塔の前へと集まって……うおお。これはまさに軍隊。ザンザンと足を揃えて大地を突き進む様はさながら戦場へ赴くソルジャーの様。
 
 シグナム先生の一言でこうなったのならば意味が全く全然分からないぜ。
 
 全部で何人だろう。一列が五十人だとしてもそれが前後に二十列ずつはあるから……二千人は軽く越えているぞ。この四階建ての建物の中にどうやって収まりきっていたのだろうか。全く想像することが出来ないぜ。
 
 ビシッと綺麗に整列された学生諸君を見つめるシグナム先生は放送室の三重窓を開けると、徐にメガホンを手に取った。何をする気なんでしょうか。
 
「諸君! よくぞ集まった。本日一一〇〇時、我々は理事長捕獲作戦を開始する! 作戦開始後は全力で理事長を探し出し、捕らえよ! 攻撃しても構わん! ひっ捕らえるのだ!」
 
 作戦開始まであと数秒しか無いっす先生。メガホン使わんでも放送室のマイクで全館に垂れ流せばよかったんじゃないのか? だが鬼気迫る勢いで叫んでいるシグナム先生に今そんな事を言おうものならそのメガホンで俺は俺の顔が原型を留めない程度にタコ殴りにされる、絶対。ので俺は関与しないことにした。
 
「「「応ッ!!!」」」
「おうじゃねぇ」
  
 シグナム将軍ここに在り。ココは戦国の世なのか? 都会に憧れてここにやってきたってのに、これじゃあ昔の世に戻ったみたいじゃないか(歴史の資料を読んだだけだが)。古の感じがビンビン伝わってくるぜ。
 
「行け、同士たちよ! ついでに四のSに所属するスバルとギンガもひっ捕らえて来るのだ!」
「「「応ッ!!!」」」
「謎だ」
 
 理事長と生徒達による戦いの火蓋が切って落とされると、一斉に進軍を開始した生徒達の足踏みによる地鳴りと、誰が吹いているかもわからないほら貝が学園全土を震え上がらせた。
 
 ついでで捕まる二人の生徒も可哀想だな。そして、大気がびしびし揺れている。ウザイ。
 
「謎極まりない」
「ギャウ」
 
 どうやらフリードもそう思っているらしい。俺の頭の上でギュウと一息溜め息。
 
 コレが五分前の話だ。
 
 
「よし。これで理事長は何とかなる」
「はい? 俺達も探すんじゃないんですか? ていうか俺達が探さないでどうするんです」
 
 即行も即行、いきなり理事長探しを放棄したのは先生のほうだった。クラスを後にして、まっすぐ、迷いも躊躇もなく先生が向かったのはココ放送室。教室で追いつけなかった時点で探すことを放棄していた模様。
 
「この場は奴らに任せる。我々は一旦教室に戻る」
「何でです?」
「ホームルームの時間だ」
 
 知らない。知りません。俺はそんな事知ったこっちゃない。俺は理事長に会わないと話が進まねぇんだ。まず見つけようぜ。
 
 と言えたらどれだけ幸福なことか。先生の先生らしからぬ一面を見た俺は余計なことを事を口走ることは当分無いな。絶対に逆らいたくない。
 
 もう何も言うまい。放送室をあとにするシグナム先生の後を追いかける俺は心の底でそう誓った。
 
 
――――
 
 
 それは一瞬だった。
 
 
「リボルバーナックルッ!!」
 
 どごーん。と、空中に魔術で形成された青い道を走る青紫色をしたショートカットヘアーの少女はその右腕に装着されたリボルバーなんちゃらを豪快に生徒Aにぶつけた。当然生徒Aは果てまで吹っ飛んでいく。
 
「力の入れ方が甘いわよ、スバル!」
 
 ずごごー。と、粉塵と爆発(のようなエフェクト)を巻き起こし、空を走る少女に続いて同じく青紫色、こちらはロングヘアー、の少女が左腕に装着しているショートカットの少女と同様のリボルバーなんちゃらを生徒Bへとぶちかます。生徒Aよりも派手に吹っ飛んでいった生徒Bの死は確実なものだろう。
 
「え?」
「そこにいたか!」
 
 
 放送室が一階の最奥端にあり、俺のクラスは四階の逆最奥端にある。それがもうただの嫌がらせにしか思えなくて俺は深く溜め息を吐いていた。ちょうど階段に差し掛かる間際に溜め息を吐いたわけだが、その階段横の窓の外に一瞬だけその光景が映った。
 
 よくわからない光景だった。何せ一瞬だ。理解しろって方が無理。ありえない。とりあえず視界に移りこんだ様子をそのまま棒読みで説明してみたが、説明している本人は理解できていないんだからこれ以上要求されても困る。なんにしても、吹っ飛ばされた生徒二人はご臨終としか言いようが無い。ドンマイ。
 
「そこの二人、待て!」
 
 いつの間にか校舎の外に飛び出しているシグナム先生は空を駆ける少女(約二名)目掛け咆える。咆えたところで(やっていたのかもわからないが)授業を抜け出し外に飛び出した(らしい)二人が止まるはずが無い。
 
「や、やばッ、シグナム先生だ! 逃げよッ、ギン姉!」
「それは駄目よスバル。ここは……身を守ったらやられる! 攻めるわよ!」
『Wind road』
 
 どこかで聞いたような台詞を吐き棄て、ギン姉と呼ばれた少女はデバイスから発せられる術式が作り出した新たな道を駆け出す。こいつがさっきエリオ少年が言っていたギンガっていう奴か。名前からして男だと思っていた。大変失礼な思い込みをしていたことを今謝ります。ごめんなさい。
 
「ま、まってギン姉!」
 
 次いで、スバルと呼ばれた少女も駆け出した。
 
 ちっ、と舌打ちするシグナム先生は向かってくる二人の行動に何故か微笑み吐き捨てる。
 
「ええい。待てというに馬鹿者共め…………人の話を聞かぬ愚か者は――斬る!」
 
 シグナム先生はデバイスを起動し、柄を握り締め、空を駆ける二人を睨み付けた。
 
 俺はどうやら解説関係の仕事が向いているのかもしれない。どうしようもなくこの状況を説明せずにいられなかった。
 
 ――って……ちょ……えぇ?! 斬るんですか?! 止めないんですか?!
 
 躊躇なく剣を抜くシグナム先生は目を瞑り、深く、深く、深呼吸。そして、カッと目を見開くと同時に、大地を蹴った。
 
「はぁぁぁっぁぁぁぁ!!」
「おぉぉりゃあぁぁぁ!!」
 
 空中で交差しながらアクロバティックに接近する二人の気迫は凄まじいもので、窓越しで見ていた俺はその迫力に圧倒され唖然としていた。俺とそんなに変わらない歳に見えるのに、すげぇ迫力。こんな奴がココにはいるのか。
 
 思わず感嘆の溜め息がこぼれる。仕方が無いだろう。凄いんだから。
 
「ナックル……バンカァァァァ!!」
「全力……必中!! 零距離――ディバイン・バスタァァァァァ!!」

 二人の全身全霊を込めたであろう二対の拳がシグナム先生目掛け放たれる。
 
「ふっ――ん…………レヴァンティン!」
『Ja』
 
 二つの拳がシグナム先生に触れる瞬間、ズズンと大爆発が起きた。え? コレってまずくね?
 
「せ、先生!」
  
 爆発粉塵の中を駆け抜ける少女二人は、しかし、笑みを上げることは無かった。
 
「ど、どこにッ?!」
「ッ!」
 
 互いに目標を見失いかけ、慌てて気配を探り、感じた先は、空。
 
 爆発粉塵の上空で不適な笑みを浮かべるシグナム先生は、鞘に収めた剣の柄に手をかけ、 
『Schlangeform』
「まだまだ、未熟! 火龍……一閃!」
 
 気合を吐き出すかのように剣を引き抜いた。勢いよく抜かれた剣の刀身は幾重にも分かれ、まるで空を駆ける刃竜の如く撓り、下で慌てふためく二人目掛け、猛スピードで降下する。
 
「ば、バリア――」
「間に合わない!」
 
 ドゴンと一発。空中と地面の狭間で先程のモノとは比べ物にならない大爆発が起きた。俺は凄まじい風圧に耐えうることが出来ず吹き飛ばされ廊下を転がっていた。情けないっていうな。
 
 フリードは未だに俺の頭にへばりついている。そのしつこさだけは認めてやろう。だがいい加減に離れてくれ。重いんだ。
 
 起き上がり、慌てて外の様子を伺いに戻ると、地面にクレーターが出来ていた。何であの攻撃でココまで酷いことになるのか、それはもう先生の技量を現したモノであってそれ以外の何モノでもない。
 
 で、少女二人はどうなったかって言うと……。クレーターの真ん中で伸びてますね。
 
「ま、負けたぁ〜……」
「やっぱり、逃げたほうが良かったのかしら……」
「もっと戦い方を工夫しろ。同時攻撃するのはいいが、その後が点で駄目だ」
 
 いや。そうじゃないだろ。何だってこんな所で戦いをおっ始めてるんだよ。教室行くんじゃなかったんですかね先生。お説教タイムは放課後にでもやってくれ。俺は早く教室に行きたい。座りたい。
 
「先生。とりあえず教室行きましょう。それに今の戦いの間に理事長も捕まってると思います。さっさと理事長を教室に連れて行ってですね――」
「理事長がそっちに逃げたぞ〜!」
「マジか」
 
 全然捕まってないし、こっち来るし。数千人いてどうして人一人捕まえられないんだ。
 
 ……ようし。なら俺が捕まえてやろうじゃない。理事長って奴をよ。
 
「油断するなよ」
 
 散々追いかけてきたんだ。油断するわけないじゃないですか。パァンと両頬叩いて気合入魂。カモン、理事長。今のあんたに俺は止められないぜ。
 
「先生、あの人誰ですか?」
「見かけない人ね」
 
 お。そうそう。そういうリアクションを待っていたんだ。何だってこんな当たり前のリアクションが嬉しく思えるんだろう。それはきっとシグナム先生含む三人の記憶能力のせいだな。
 
「おい。来たぞ」
「へ?」
 
 なんてことの無い反応に感動していた俺はあろうことか油断していた。いきなり自分の前言を全否定してしまった俺にすべきことと言えば向かってくる理事長に攻撃を仕掛けることぐらいだ。さぁこい理事長。俺の熱いチョップを喰らうがいい。目を閉じて精神統一。大丈夫、俺なら出来る――。
 
「おりゃあ!」
「うきゅう!」
 
 階段を降りて曲がってきた人物目掛けチョップを一発。スコーンと綺麗に決まった。
 
 ……うきゅうって、え?
 
「……ぅ……ぅう?」
 
 俺が理事長だと思ってチョップを喰らわした人物は金髪の、赤と緑、それぞれ違う目の色をした小さな女の子だった。しばらく目を真ん丸くさせ、? ? と疑問符を頭の上に浮かべている。何が起こったのかわからないんだろうな。
 
 って、やばい。泣きそうだ。泣くな、泣くなよ。泣かないでおくれ――、
「ぅ……ぅぁ、うぁあぁぁ〜〜ん!」
 
 ですよねー。泣きますよねー。
 
 
 
 高町なのはの憂鬱 (5) 完
 
 
 〜あとがきといっていいのかもわからないもの〜
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| 神八 | 00:29 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
高町なのはの憂鬱 (6)

 
 ダダダダダッと俺の目の前を駆け抜けていく生徒諸君。おい。華麗に無視して行くんじゃねぇ。
 
 一瞬にして廊下の向こうへと消えていった非情な奴らのことなど気にせず、
「あ〜ん! うああ〜ん!」
「な、泣くな! 泣かないで下さい! お願いします!」 
 
 全力で土下座をした後、よしよしと頭を撫でながら理事長がどこへ行ったのか頭の中で想像してみると一つの可能性が浮かんだ。
 
 逃げる理事長。階段に向かう途中にいたこの子供を替え玉にして階段を降ろさせる。
 
「理事長がそっちに逃げたぞ〜!」
 と、理事長自ら声を変えて叫ぶ。叫びに釣られて生徒連中が階段に向かったのを確認して本人逃亡。俺は降りてきた関係の無い子供にチョップ。
 
 ありえる。まさかな。ていうかなんで理事長は全校生徒に追われる羽目になっているんだ?
 
 あぁそうだ。シグナム先生がそうしろと皆に命じたんだ。ある意味では理事長が可哀想だが、落ち着きの無い理事長も悪いのでどっちもどっちだ。そういう考えに落ち着こうと思う。
 
 いや、待て待て待て。理事長はただ俺を待ちきれなくて教室に向かったんだよな。で、いなかったからまた移動しただけって話じゃないのか?
 
 ううむ。よくわからない状況になってきたぞ。
 
 
「ぅ〜……」
「すまなかった。本当に。理事長だと思ったんだ」
「何だ。ヴィヴィオじゃないか。こんな所で何をしている?」
 
 誠心誠意、心を込めて謝る俺の後ろに、ミディアムに焼き上がった二人を担ぎ背負うシグナム先生が廊下に戻ってきた。どんな怪力(馬鹿力)をお持ちなんでしょうか先生。熱血体育教師に見えない貴女がそんな事が出来るなんて普通の人なら驚くでしょうが俺はそれを超越して途方に暮れてしまってますよ。
 
 そして俺が泣かしてしまった少女の名はヴィヴィオと言うらしい。
 
「ママを捜して……三千里……」
 
 嘘だ。壮大な嘘つきだ、この少女。何かパクってるだろ。しかしウルウル目でそういう事を言われると本当のように思えて仕様が無いが、やはり嘘だと確信出来るものがあるのでココは一つ、先生に任せてみることにした。
 
 別に面倒に思って逃げたわけじゃない。こんな子供に、「嘘だッ!」なんて大声で怒鳴れるわけがないし、「へー、そうなのか、偉いな」と褒める訳にもいかない。
 
 どう反応してやればいいのか困惑してしまうんですよ先生。と期待の念を送っていると通じたのか、シグナム先生が少し唸り、呟いた。
 
「確か――彼女は生徒会室にいたな……。こんな所にはいないぞ?」
 
 生徒会室にこの子の母親がいるのか。へー。いや。ソレこそ嘘だろう。何で一児の母が生徒会室に……あれか? 理事長がいないから急遽生徒会室でってか? ありうる。ありえ過ぎて理事長を早く捕らえなければという心情に駆られてしまう。俺の為っていうのもあるけどな。
 
「スバル、ギンガ。お前達はヴィヴィオとそいつを連れて教室に戻っていろ」
 
 二人を降ろすと、振り向き、放送室の方へと足を進め始めた。ついに理事長に会う事無く教室に行くことになってしまった俺はどうしようもなく虚しい気分なってしまう。
 
「先生はどこにいくんですか?」
「今思い出した。ティアナを捜しに行って来る。大方理事長に言いくるめられて連れて行かれたんだろう」
 
 今って……そうですね。俺も先生がそう言うまで存在の欠片、粒すら覚えていませんでした。キャロちゃんが言ってましたね。理事長と一緒に出て行ったって。
 
 ってことは、だ。今、ものすごい勢いで逃げてるんじゃないのか? 理事長と一緒なんだから。
 
 先程そこで二人に吹っ飛ばされた生徒A、Bよりも可哀想だ。一人にぶっ飛ばされたんならまだしも、ティアナと言う人物、数千人の生徒に追われているんだから。プレッシャーと言うかなんというか、感じなくていいもん感じさせられているんだろう。コレを可哀想と思わない奴は非情な奴だ。という訳で、可哀想に。
 
「ティアが? なら私も――」
「いや、いい。今シャマルから念話が入った。校舎裏でのびているようだ。連れてくるからお前達はホームルームの準備をしていてくれ。エリオとキャロが先生を呼びに行っている。その間にだ」
「ぁー……」
 
 巻き添え喰らったんだな。皆がその場でそう思ったことだろう。
  
 なんて可哀想な人なんだ、ティアナって人は。
 
 ちなみにシャマルって人は保健室の先生らしい。
 
 
――――
 
 
「君、誰? 新入生君? ここら辺の子じゃないよね? どこから来たの?」
 
 珍しいものでも見るかのような好奇心に満ちた瞳と共に問いをかけてくるスバル嬢。
 
「こらスバル。そんなに一度に質問されたら困るでしょう」
 
 対するギンガ嬢は妹に注意を促すが如く、呟く。そういえばさっきの戦闘中にスバル嬢はギン姉って叫んでたな。と、なると、この二人は姉妹か。
 
「いや。それは別に構わないですけどね。気になったんでお聞きしますが、お二人は御姉妹で?」
「そうだよ〜。よっくわかったね〜」
 
 一応戦闘中の会話を聞いていたからであって、そうでなかったとしたら言われるまで気付かなかったかもしれない。雰囲気、というか顔立ちが似ている気もしないではないのでその前に気付いたかもしれないが。
 
 昔から耳だけは良かったんだよ、俺。
 
 それにしても、戦闘時の迫力を微塵も感じさせない程能天気な口調だな。頭の上で跳ねるように暴れているピョン毛は一体なんなのか。気になってしょうがない。頭の上に竜を乗せている俺が言える言葉じゃあないがな。
 
 とまぁそんな会話をしていると三人に挟まれて歩く少女ヴィヴィオが何かを言いたげそうに口をパクパクさせている。
 
「どうかしたの? ヴィヴィオ」
「あ、ぁの……チョップさん」
 
 誰だそれは。俺のことだろうか。いやまぁ確かにチョップしましたよ。でもきちんと謝ったじゃん、土下座までして。許してくれよ、ヴィヴィオちゃん。
 
「チョップさんだって。君のことだよ」
 
 突然出来たニックネームを聞くと、半ば笑いを堪えて俺のことを指摘するスバル嬢。ギンガ嬢も顔を反らしてププッと笑いを堪えている。勘弁してくれ。
 
「チョップさんじゃない……。……まぁいいや。何?」
「おトイレ……」
 
 ホワッツ?! ホワイ?! 待て、何故俺に言う?!
 
「お手洗いならそこの角曲がって直ぐですよ」
「お、こりゃどうも――」
 
 違う。どうして俺が指名されたよ。君女の子だよね。どうして男の俺を選んだのかな? ねぇ。ヴィヴィオ嬢に思念通話を試みるが返事はなく、顔を伺うがどう見ても戸惑っている。思念通話の仕方が分からないとみえるな、こりゃあ。
 
 スバル嬢とギンガ嬢は完全に行く気が無いという気配。わかったよ。俺が行けばいいんだろう俺が。
 
「それじゃあ教室で待ってるからー」
「また後でですね」
「……はいはい……」
 
  
 二人と別れ、急いでトイレに連れて行き、用を足させていると、個室の中でゴツンという音が響いた。
 
 一体何事か?
 
「ヴィヴィオちゃん?! どうかし――ぬぐぉぉ……!」
 
 個室の前にある小便器で同じく用を足していた俺は思わず慌ててしまったのだろう、ズボンのチャックで自分のアレを巻き込んでしまい声にならない悲鳴を上げる。想像を絶する痛みと、それをやってしまった自分への嫌悪感。絶望という言葉、まさにその一言で今の俺の心境を言い表すことが出来るだろう。
 
「ふ、フリード……頼む……」
「ギャウ」
 
 頭の上に居座る(という表現がお似合いだろう。もうどうでもいい)フリードに個室の中の様子を伺わせている間に俺は改めて、慎重にチャックを閉めた。
 
「ギャウギャウ」
 
 戻ってきたフリードが何を言っているのかさっぱり分からないのでジェスチャーをしろと命令。
 
「何? 座っていて、頭を壁につけて、目を閉じている?」
 
 どう見ても寝てるじゃねぇか。
 
 もう一度呼びかけてみたがやはり返事はなく、仕方が無いので壁を乗り越えることに。
 
「寝てるよ。普通に。あぁもう」
 
 このままにしておくには流石に不安が残るので、後始末をし、背中におぶって教室に連れて行くことにした。
 
 なんて手のかかる……子供だから仕方が無いが……、親の顔が見てみたいものだ。
 
 
――――
 
 
 教室に着き、ガラッと扉を開ける。ざわついていた教室は次第に静まり返り、いまや殆どの視線が俺に向かって集中。何だ何だ。一体どうした。
 
 ふと考えてみればそりゃあそうだろうという結論に結びつく。顔も知らない奴が子供おぶって登場すれば誰もが口を開けポカーンとするだろう。
 
 そういえば、他の教室は(恐らく理事長捜索で)誰もいなかったのにどうしてこのクラスだけはこんなに生徒がいるんだ?
 
 そんな事はどうでもいい。この冷めた空気をどうにかしてくれ。耐えられない。
 
 
「あ。来た来た。おーい。こっちこっち」
 
 知り合いなど誰もいないこの学園、修羅場の窮地に立たされた俺に一筋の希望の光が。
 
 窓際の後ろから三番目の席付近で、スバル嬢が沈黙の神様が光臨したクラスの静寂を突き破り俺目掛けて手を振る。
 
 良かった。とりあえず居場所がある。 
 
 俺は突き刺さる視線の嵐の中を通り抜け、スバル嬢の傍に駆け寄った。
 
「ヴィヴィオ、寝ちゃったんだ……後ろの席が空いてるから座ってていいよ。もう直ぐ先生来るから。お話、その後しようねー。さっきの質問の答え、聞いてないから」
「あ、あぁ。わかったよ。でも大半は自己紹介で言うかもしれないけど」
「大丈夫大丈夫! 自己紹介は明日だから」
 
 はい? 明日? なんで自己紹介の日程が決まっているのだと疑問符が脳内に浮かびまくる。
 
「だって今日始業式終わらなかったからさー、なんでだろうねー」
 
 それは俺のせいだ、と言えるわけなかろう。余裕綽々、堂々と遅刻してきた俺がそんな事平然と言ってみろ。さっきのリボルバーなんちゃらで生徒Aみたいになっちまう。それだけは勘弁だ。
 
 どうやら延期した理由は知らされていないらしい。知っているのは教師陣だけのようだ。良かった。
 
「さ、さぁ……俺はよく分からん……は、はは」
「そーだよねー」
 
 笑いでごまかし、急いで背中で心地よさそうに眠るヴィヴィオを席に座らせ、俺は更にその後ろの空いている席に座る。
 
「ふぅ」
 
 ようやく一息吐ける。結局理事長を見つけることは出来なかったが、もういい。面倒だ。そんなものは後回しにしてしまおう。妙な冷や汗の連発だぜ全く。
 
 頭に乗っているフリードはもう放置。気にしたら負けだと考え始めていると、 
「あのー」
 
 聞き覚えのある声が耳に入った。
 
 横を向くと、キャロちゃんが立っていた。どうしたのだろうか、もの凄く申し訳なさそうな顔をしている。
 
「あぁ、ええと、キャロちゃん? なんだい?」
 
 どうして確認じみた口調で聞いたかって? キャロちゃんとの最初の会話を思い出してみろ。そうしないとまた同じ展開になりそうだろうが。
 
「ふ、フリード預かって貰っちゃって、ありがとうございました!」
 
 あぁ。そんなことか。わざわざ律儀な子だ。
 
「気にしなくていいよ」
「い、いいえ。そうはいきません」
「こいつ、離れないんだよ。だから俺が勝手に連れまわしただけ、キャロちゃんが気にする事じゃない」
「離れないならなおさら……」
「いいからいいから、なんとも思ってないよ」
  
 格好いいこと言ったつもりは無い。何故なら俺の意思もキャロ嬢の意思も関係なく、このフリードは俺の頭に住み着いてしまっているのだからこういう言い方をするしかない。他にあるなら教えて欲しい。
 
「本当ですか?」
「あぁ」
 
 
 その後、シグナム先生が現れ、
「本日は総下校だ。早急に帰るように」と訳の分からん発言を残し、今日という日は終わった。
 
 理事長はまだ逃げ回っているのだろうか。明日になったら会えるだろう。そう思わないとやってられない。
 
 頭に乗るフリードを無理矢理引き剥がし、キャロ嬢に手渡し、ヴィヴィオ嬢を保健室のシャマル先生に預けて本日終了。
 
「は〜い。わざわざありがとうね〜」
 
 シャマル先生に見送られて、学園を後にし、帰宅…………結局俺は何をしに来たんだ?
 
 
 
 
 〜あとがきみたいな言い訳〜
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| 神八 | 22:19 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
高町なのはの憂鬱 (7)
 
 翌日、耳元でぎゃあぎゃあ騒ぐ目覚まし時計の妨害音波によって起床した俺は数分かけてベッドから身を起こす。眠い。目を擦りながら制服へと手を伸ばす。
 
 昨日は一体何をしに学校へ登校したのか、未だ寝ぼけ状態全開の脳ミソを無理矢理フル回転させること五分。ようやく頭が冴えてきたらしい、だんだんと昨日の記憶がよみがえり始めた。
 
 昨日は学校中を歩き回り、そして数人のクラスメイトたちに出会った。以上。
 
 あれ? 少なすぎるだろう。もっと何かあったはずだ。しっかりしてくれよ俺の脳ミソちゃん。もう一度最初から思い出すんだよ――。
 
 ――まず――校門を乗り越え――警報が鳴り――フェイトさんが現れ――理事長室に向かい――。
 
 そう。そうだよ。それそれ、そーれ。理事長、理事長に会いに行ったんだよな。結局姿形すらお目にかかる事無く終わったけど。
 
 畜生、今日は出会えるまで後を追いかけてやるぜ。
 
 そう自分に誓いを立てていると、完全に眠気の吹っ飛んだ脳ミソが重要な情報を思考に垂れ流した。
 
「理事長? 理事長なら明日の始業式で絶対に会えるよ。理事長挨拶ってのがあるからねー。……今日は総下校みたいだし、私、この後用事があるからお話は明日しようか。……それじゃあまた明日、バイバ〜イ」
 
 昨日の帰り際にスバル嬢が呟いたお言葉。なんともありがたい。
 
 先程立てた誓いがいきなり達成できてしまうという虚空の達成感を身を置かざるを得なくなった最中に、制服への着替えが完了した。
 
 目標達成目前を祝ってブラックコーヒー(缶)で乾杯。
 
 一気に飲み干し、俺は家を後にした。
 
――――
 
 前日に比べると遥かに早い登校に思われたが、校門前付近まで来るとちらほらと学生の姿が窺えた。こんな朝っぱらからご苦労さん。あ、俺もそのご苦労さんの一人に含まれるのか。別に苦労してここまでやってきたわけでは――あるんだよな。実に疲れたよ、朝から。つーことで、俺の苦労話に付き合ってくれよ。
 
 まずな? 遠い。距離が半端じゃない。通学路は一本道なんだ。実に分かりやすくていいだろ? でもな、その距離およそ二キロ。ふざけんなって話。直線な分、なまじ距離が増して思えるからいやらしい。ずっと真っ直ぐなんだからな。歩きだと結構な長さだろ?
 
 次にな、坂が多いんだよ、坂。上って降りて上って降りて――、二キロという道路の中に四回坂が存在するんだよ。無駄にあるだろ? しかも高低差が激しい。学園に近づくほどに高くなるんだ。俺、空飛べないからさ、律儀にも歩いてきたんだよ。馬鹿みたいだろ? 全く、俺って偉いよな。
 
 そう思っていたら、何だって? バスがありやがるんだ。しかも学園の送迎バス。専用機だぜ専用機。一体この学校の費用は年間幾らなモノなのか気になったもんじゃない。計り知れないよ、本当。
 
 とまあ、半時間、いや、あともう少しか? それぐらいの時間歩いてきたって訳だ。今朝もウォーキングお疲れ様ってか。いやいや、そんな言葉はいらない。今朝飲んだコーヒーが胃で暴れているぜ。どうせくれるなら言葉ではなく胃腸薬をくれ。
 
 実に面倒臭い。これを毎日続けなければいけないと思うと億劫になる。バスに乗ればいいって話なんだがな、そのバスの乗れる場所が俺の家から半キロ離れていやがるのよ。バス停で停留所を確認したから間違いない。近場のバス停でこれなもんだからますます嫌になる。歩いてまでバスに乗ろうなんざこれっぽっちも思っていない俺に残された選択は、言わなくてもわかるだろう? よってダークムードが俺の周りに降臨するわけだ。
 
 校門前で黒い空気を放っていると登校中の学生諸君にどんな印象を与えるかわかったもんじゃないので学内に向かうことにした。
 
 昨日到着したときに行こうとした場所、覚えているか? 職員室だよ。職員室。俺はまずそこに向かったね。場所なら分かる。職員塔一階だ。購買部の真横にある。帰り際に確認した。実にいやらしい位置づけだ。これなら生徒よりも先に、好きなものを購入する事が出来るのだからな。大人という奴らは実にずるがしこい。
 
 話を戻そう。本当は昨日の始業式前に職員室に来なければならなかったんだが、アレだ。無理だったろ? 行こうと思ったら理事長に会いに行かなきゃならなくなったし。まぁ、理事長に会う以前に登校した時間が始業式終了時刻だったからどのみち無理だった――、っと、余談余談。うん。行く気は一応あったよ。一応な。 
 
 とりあえず、一応昨日いたって事だけは言わなきゃならん。何を言われるか、少々不安だが入らないことには報告も出来ない。当然、叱咤を覚悟で職員室に入った。中にはお茶をすするシグナム先生とシャマル先生の二人だけしかいなく、どうやら叱咤はなさそうだと思ったがシグナム先生から激励の言葉、
「どうやら今日は式を無事終えることが出来そうだ」
 嫌味交じりの一言で俺を萎縮させる。恐ろしい人だ。
 
 
 式が始まるまでここにいるようにと言われ、接客用の部屋で待機することになった。接客ということもあってか、この部屋は若干の高級感で満ち溢れている。そうだな、骨董品が多いな。その中で、俺はガラスケースの中に飾られた蒼い宝石を見つけた。凄く綺麗なんだ。男の俺が綺麗だって思うんだから相当なもんだぜ?
 
 思わず手を伸ばしてしまいそうになるぐらい、魅力的な何かがその蒼い宝石にはあったんだ。
 
 実際にそう感じた時には既に手を伸ばしていた。はっはっは。いいじゃないか。見るだけなら誰も怒りやしないって。
 
 うん。皆そういうんだ。わかってる。鍵がついていなかったのが悪いんだぜ――と、心のどこかに潜んでいた悪魔が囁いたんだと思う。ガラスケースを持ち上げて、その宝石を手取っちまった。本当に綺麗だなーなんて思いながらぼんやり眺めていたんだ。直ぐに元に戻せばよかったのにな。そんな石っころに心を奪われていないで。
 
 俺はね、その行為に後悔してるんだ。なぜなら、この後直ぐにシャマル先生がお茶を運んで来たからさ。
 
 当然、慌ててその蒼い宝石を“ポケット”に隠したさ。戻せばいいものを、わざわざポケットにな。
 
 石っころをポケットに突っ込んだまま、しばらくシャマル先生とヴィヴィオ嬢の話をしていると始業式時間が来ちまった。
 
 この時点で俺は石のことをすっかり忘れてしまっている。それはなぜか。ヴィヴィオ嬢の事が意外にも気になっていたらしい俺はその話にすっかりのめり込んでしまったってわけ。たかが石、と、心のどこかで思っていたんだな。始業式が始まった頃に思い出してもの凄く青ざめていたのを良く覚えている。
 
 
 本題。ここからが本題。
 
 始業式は、昨日は学生塔の印象が強すぎたため気付かなかったが、職員塔、正面から向かって左側に建てられた体育館で行われている。学生塔は向かって右にある。
 
 始業式が始まるやいなや、俺は俺が昨日まで捜し求めていた理事長の姿を目の辺りにする。
 
 体育館のステージ、壇上には校章入り演台、その上と周りに祝福花が置かれ、その傍でマイクにに向かい語る長い銀髪に深紅の瞳の女性。
 
 このお方こそが理事長だというのだ。
 
 一言で言おう。美しい。 俺は昨日一日、こんな美人を追いかけていたのか。何故見つけることが出来なかったのだ。
 
 いや、そんなことはどうでもいい。ステージ上では、理事長の長ったらしくない簡潔な挨拶が終わり、理事長が舞台裏に戻ってくる。戻ってくると、真っ直ぐに俺の元へ来る。当然だろうな。あぁ、当然だ。理事長は一言だけ言い残し、その場を去っていった。無表情だった。俺はその場で震え上がることを余儀なくされるわけだ。
 
「後で……理事長室に来い……」
 
 だってよ! あぁ! まじビビッたよ! 心臓が破裂するかと思ったさ! なんちゅう声色で言いやがるんだ……。あぁ、恐ろしい。悪寒が止まらない。
 
 
 いや、今のが本題では無いぞ。
 
 その後俺は前日の遅刻の件を謝罪した後に、丹念に書かれた簡潔簡単わかりやすい自己紹介文を読み上げ、何事もなく新編入生の言葉を告げ終え安心感と開放感に満たされる。良かった、何も起きなかった。そうしてそのまま流れるように式が進み、程なくして終わった。
 
 俺と理事長以外の話があまりに長すぎたために欠伸と居眠りが多く見受けられた。まぁそうだろうな。聞きたくも無い話を延々ダラダラと聞くと言うのはある意味地獄なんじゃないかと思える。それはここにいた生徒の大半が思っていることだと思う。
 
 いよいよ式から開放され、各々クラスごとに、気だるそうな雰囲気はそのままにして教室に戻っていく。
 
 そうして俺の所属する四−Sもクラスに戻り、五分後に、改めて自己紹介をすることになった。
 
 五分なんてもんはあっという間に過ぎちまうもんで、シグナム先生の誘導の下、出席番号順に自己紹介が始まった。出席番号は名前順ではなく、教師陣が適当にちりばめたらしい。
 
 なんで副担任のシグナム先生がいきなり教壇の前に立ち尽くしているのかというと、本担任の先生は昨日体調を崩して今日は休みらしいからだ。
 
  
 エリオ少年、キャロ嬢、ギンガ嬢、スバル嬢の自己紹介も順々に終わり、流れるようにして順番が俺の番へとやってくる。
 
 自己紹介っていうのは慣れないもんだよな。本日二回目な訳だが、全くリラックスできない。
 
 先程話した内容を噛まないように言い終え、再び開放感に包まれながら椅子に腰掛ける。
 
 俺は編入生って事で出席番号が最後だったんだが、どうやらそうではないようだ。
 
 
 俺は多分、この出来事を一生忘れることは無いだろう。
 
  
「実はもう一人このクラスに転入生が入ることになっている。よし、入って来い」
 
「は〜い」
 
 唐突過ぎるシグナム先生の物言いに、クラスの奴らは全員唖然とし、俺は欠伸をした。確かに驚くべきことなんだろうが、俺も編入、もとい転入生。驚くに驚けない。
 
 教室に入ってきた人物は、教室の一番後ろ端と言う事で、前列で背筋を伸ばして唖然としている連中のせいで見え辛い。
 
 俯いていることにしよう。後でじっくり拝めばいい。今はゆっくり緊張の糸をほぐさせてくれたまえ。
 
 例の如く、教室に入ってきた生徒は自己紹介を始める。
 
「地球出身。高町なのは」
 
 女生徒らしい。
 
 地球? あぁ、聞いたことがあるな……。しかしそれ以外特別なことはなく、普通の自己紹介になるんだろうなと思い、顔を窓の外、空へと向けた。あぁ、青い。実にいい天気だと能天気なことを考え始めた。
 
「ええと、はっきり言います。ただの人間には興味ありません。この中に凡人、稀少技能(レアスキル)、戦闘機人、その他普通じゃない方がいたら私のところに来てください。以上です」
 
 思わず顔を向けちまった。いや、向けずにはいられなかったね。
 
 栗色の髪をポニーテールでまとめて、生徒はおろか先生の視線まで集めてしかし平然と立つ、顔立ちの整ったつぶらで大きな瞳の女。
 
 前列の奴らのほんの僅かな隙間から見えた高町なのはの姿がいやにはっきりと見えたのを良く覚えている。かなりの美人がそこにいた。
 
 前言で語った人物を捜すように教室内を見回し、先生に一言、
「あそこの席しか空いていないみたい……。先生、あの席に座らせていただきますね」
「あ、あぁ」
 
 恐らく本気で言ったんだろうな、さっきの言葉。凛とした態度で、俺の後ろの席にやってくる。
 
 
「ちっ…………ろくな奴がいないの……」
 
 悪魔のささやきが後ろから聞こえた。
 
 
 こうして俺は、高町なのはと出会った。
 
 
 
 高町なのはの憂鬱 (7) 完
 
 〜あとがきという名の逃げ道〜
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| 神八 | 00:56 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
高町なのはの憂鬱 (8)

 
 自己紹介での不思議発言から二週間。不思議だったのは自己紹介の時のみでそれ以降は至って普通の美人女子高生を演じ続けている高町なのは。
 
 人当たりも良く、文武両道な高町なのははたちまちクラスで人気者になった。初日の不思議発言を除けば、誰がどう見てもパーフェクトな才色兼備の女子高生だ。
 
 変わったところは特に無いし、特に問題も起こさない。優等生の中の優等生だな。
 
 全く持って羨ましい。
 
 羨ましがる理由? それはだな……あまりに俺という存在が普通すぎてクラス内での存在感が殆どなくなってしまっているということだ。
 
 普通、つまりは凡人。天才でもなければ馬鹿でも無い、あくまで「普通」な人間。それが俺だ。
 
 わかるか?
 
 凡人と天才が同時にクラスに入ってきてみろ。
 
 特に目立った印象の無い凡人と、何をしても目立つ才色兼備の人間、どっちが注目を浴びるか、言わんでもわかるだろう。つまりはそういうことだ。
 
 
 唯一、クラス内で俺の存在を確かな者として認めてくれている奴は、初日に知り合った五人と一匹、後に知り合った一人の計七人だ。
 
 寂しい、なんて思わない。
 
 その七人、まぁ一人は人間ではないが……、六人は、いや、一人は男子か…………、コホン! その五人、あぁ、二人は子供だな…………ゴホンゴホン! その四人は顔立ちもスタイルも良い美人ぞろい。
 
 美女に囲まれて寂しくないといったら罰が当たろう。
 
 
「チョッパー君、チョッパー君」
 
 チョッパー君とは俺のこと。初日にヴィヴィオ嬢にチョップ君と呼ばれたのを覚えているだろ?
 
 それがそのまま拗れてチョッパー君と言うニックネームが誕生、定着してしまった訳だ。
 
「ん? あぁ、スバルさんか」
 
 生徒の息抜き、教師の休息、一時間弱の昼休み中。 
 
 教室の前方、教卓と黒板の狭間で高町なのは――大方質問でもしているんだろう――を取り囲む女子生徒と男子生徒には混じらず、持参の質素な弁当を残す事無く平らげ、特別やることの無くなった俺は空をポケーと眺めていた。暇人と言うな。
 ――な、俺に話しかけるのは初日に知り合った六人の内の一人、スバル・ナカジマ嬢だ。
 
 どこかでお昼でも食べてきたんだろう(そういえば授業終了後直ぐに食堂に行くといっていた気がする)、――たらふく腹に物を詰め込んだんだろうな――満足げな表情を浮かべるスバル嬢の口元にはソースがついていた。俺はそっとハンカチを取り出し、そっと拭いてやった。
 
「おっと、これは失敬失敬」
「うん。こんどからはちゃんと拭いてきてくれ」
 
 テヘッとはにかみ、頭に手を当てるスバル嬢に指導兼ツッコミをいれて、改めて用件を聞きなおす。
 
 質問内容はとてもどーでもいいモノだった。
 
「スバルでいいってば。さん付けなんてなんだか照れちゃうよ。あ、でねでね。次のホームルームで各種委員会の役員決めるでしょ? チョッパー君、学級委員長に立候補してみてよ」
「断固却下する」
 
 何故に、俺が、ダントツでクラス内かったるい仕事ナンバーワンに輝きそうなモノにわざわざ立候補せなあかんのか。何を考えてモノを言っているんだろう、スバル嬢は。
 
「ありえないぐらいに目立つだろう。地味ーな俺はもっと地味ーなお役目につけばいいんだよ。例えばそうだな、ゴミ当番とか」
「いや、地味すぎるわよ、それ。でもまぁ、いいんじゃない? チョッパーは影が薄いからちょうどいいぐらいのよ。学級委員長なんて役柄、肩の重荷が過ぎるわ」
 
 と、素晴らしいぐらいなまでに侮辱な言葉で俺の否定の言葉を支援したのは、前回理事長騒動に巻き込まれた名前だけの存在、ティアナ・ランスターだ。
 
 前年度、俺がまだこの学校にいない時、委員長をやっていたらしい彼女は若干態度が大きい。気にするほどのものでも無いがな。
 
「もう少し柔らかな言い方は出来ないものかね、まぁいい。ということでティアナさんの言うとおりだよスバル君。俺には荷が重過ぎる。と、言うよりも、どうせティアナさんが委員長をやるんだろう? わざわざ俺を推薦するまでも無いだろうに」
「さ、さん付け禁止! 鳥肌が立ったわ!」
 
 あんたまでそういう事を言う。さん付け禁止って……出会って間もない人相手に呼び捨てするのは人として抵抗があるだろうよ。
 
 が、そういうことを柔軟に受け入れることの出来る俺は素直に呼び捨てにすることにする。
 
「私は立候補しないわよ? だってあの新入生、高町さんのほうがよっぽど適任そうじゃない。やるとしら、そうね、副委員長かしら。ちなみに、クラス委員長は男女一人ずつだからあんたも立候補できるわよ、一応」
「断じてやらん。絶対にだ。委員長のことだが、俺は別にティアナさ……ティアナでも十分にやってくれそうな気がするから高町なのはでなくてもいい。それよりも俺は高町なのはのことを未だに理解できん。初日のアレがまだ気になっているんだ」
 
 意外と引きずるタイプなんだ、俺。
 
 初日のあの自己紹介のことを周りの奴らはどうせ冗談だろうと思っているんだろう、もう気にしていないみたいだが俺は違う。遠目だったが俺ははっきりと見て、覚えている。あの本気でものをいっている口調と眼差しを。
 
 冗談を言っているようには見えなかった。本気も本気、大マジだろう。
 
 だが、それっきり変なことは言わないし、むしろ皆がいい意味で驚くことしかしない。
 
 実を言うとあれは気のせいだったのかなとか思い始めている俺が今ココにいる。
 
 あぁ、俺ってなんて優柔不断なんだろう。意味が少し違うか? 違わないな。あぁ、断じて違わない。
 
「あ、あんた、褒めてるつもり? 何もでないわよ? でもまぁ、そこまで言うなら……」
「いや、別にそこまで言ってない」
「る、るっさいわね! わ、分かってるわよ!」
 
 何かといちいちキレる御人だ。
 
 何をいちいちキレているんだろうか。
 
 正直にモノを言ったまでだというのに。
 
 これだから女という生き物はわからん。
 
「そっかなー? 別に気にならないけどなー。確かにアレはインパクトあったけどねー。チョッパー君の自己紹介に比べたらだけど」
 
 放っておけ。
 
 真面目に生真面目、真剣にありがちでありきたりな、それ以上でもそれ以下でも無い、ただの一般人の書く一般的で普通な自己紹介文と、あの奇天烈珍妙で訳の分からない一般常識のある人間が聞いたら頭の上にはてなマークを浮かべざるを得ない衝撃的自己紹介文を一緒にするんじゃない。
 
「そういうわけだから俺は委員長なんて忙しそうな仕事、立候補しないからな」
「えー。つまんないなー。ねー? ティアー?」
「べ、別に、知らないわよ! こいつのことなんか」
 
 う〜ん。コレが都会の学園生活って奴なんですかね。普通だな。刺激がまるで無い。
 
 
 と、普通であるこの時がいかに幸せなものかを、今後の俺はしみじみと懐かしく思うことになる。
 
 
 高町なのはの憂鬱 (8) 完
 
 
 〜あとがき〜
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| 神八 | 03:33 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
高町なのはの憂鬱 (9)

 
 その後のホームルームで各種委員が決定。
 
 ティアナ嬢は委員長に立候補せず、適当な役職に就いた。
 
 かたや期待の高まる委員長候補ナンバーワンの高町なのは。
 
 誰もが委員長になってくれるだろうと思っていたんだろうが、ものの見事にその期待を裏切ってくれた高町なのははティアナ嬢と同様、適当な役職に就いたという。理由を聞くに、「忙しい」らしい。
 
 何が忙しいのか、皆はよく分かっていないみたいだ。勿論俺も、おおよその予想は立てられなくも無いが、潔く言うとしよう、分からない。
 
 
 期待度ナンバーワン(今も尚継続中)の高町なのはと昨年委員長だったティアナ嬢が委員長にならないのなら誰がなる?! と、誰もが心配したと思うだろう?
 
 ところがどっこい。もう一人、四−Sのカリスマ(カリスマとは、言うまでも無く高町なのはとティアナ嬢の事である)が二人のほかにもいたんだな。
 
 
 高町なのは嬢に負けず劣らずの美人。ティアナ嬢以上にはっきりとものをいう毒舌っぷりが評判の女子生徒。
 
 
 聖王ヴィヴィオ。
 
 
 この前出会ったヴィヴィオ嬢にもの凄く似ているが、別人だろう、常識的に考えて。
 
 以前出会ったヴィヴィオ嬢は幼い子供。
 
 聖王ヴィヴィオ嬢はどうみても俺と同い年、もしくはそれ以上。
 
 比べて見極めてから違いを答えろと言われたら半秒かからずに即答してみせる。一〇〇パーセント違う、と。
 
 
 脇道にそれてしまった。コホン。
 
 兎にも角にも、第三のカリスマがこのクラスにはいたと言うわけだ。
 
 それよりも何よりも、自己紹介の時点では聞かされていなかった「聖王」の部分。
 
 一体この二文字はなんぞ。
 
 この質問に対しヴィヴィオ嬢は、
「深い意味なんてないですよ」
 
 意味も無いのにやたらと威厳に満ち溢れた名称をいれるんじゃない。
 
 聞こえは良い。それに格好良い。が、日常生活において、その名で呼ばれたいとは思わない。……チョッパーよりはましだがな――っと、ええい。どうも脇道にそれてしまうな。
 
 
 ヴィヴィオ嬢が委員長になる事に誰が反対などしようものか。拍手喝采。それこそ耳を劈くほどの。
 
 晴れて委員長になったヴィヴィオ嬢は、早速委員長の仕事を果たすべく、教卓の前に立ちクラス全体を仕切り始める。
 
 ご苦労なこった。
 
 俺は欠伸をしつつ、ホームルームが終わるのをじっと耐えていた。
 
――――
 
 数日後。
 
 あの不思議発言は一体なんだったのか。虚勢か、もしくは本気か。
 
 今となってはあの時発した言葉の中に出てきた「凡人」の「ぼ」の字すらも口にしていない。実に、気になって仕様が無い。
 
 気にしたところで本人に聞いて見なければ分からないのだが、何せ高町なのはだ。
 
 近寄りがたい雰囲気というものがある。
 
 一種のバリアー、そう、バリアー。
 
 鋼鉄の見えざる壁を張っているに違いない。今まで興味が湧かなかったのはその壁のせいだと思う。
 
 今更だが、高町なのはは――今まで何度も言ったがあえて言わせて貰う――相当な美人だ。
 
 席が前後の距離ということもある。少しぐらいお近づきになりたいなぁなんて思ってしまうのも思春期真っ盛りな男子生徒なら当然の事だろう。と俺は断言しておく。間違った事を言ったつもりは無い。
 
 てなわけで俺は、気になり続けていた話題を振る事により女の子と会話をしようなんていう下心丸出しな行為をしようとしているわけだ。
 
 いや、今となっては、〜した――過去形に当たるか。
 しかも、〜してしまった――最悪な過去系、だ。
 
 思考回路がショートしていたとしか思えない。
 
 実に後悔の残るアクションだった。
 
 
 
 窓枠に寄り掛かれるように椅子の向きを調節。
 
 腕を椅子の背もたれに乗せ、不自然さを装わないよう、俺は一言呟いた。
「なぁ、この前のアレ。本気で言ってたのか?」
 
 言葉に反応した高町なのは鋭く、どこか冷たい眼光を俺へと向ける。
 
 いつに無く不機嫌そうだ。どうしたことだ。
 
「アレ? アレって何?」
 
 返ってきた言葉の口調もまた冷酷。俺は動揺を隠しつつ、言葉を続けることに。
 
「アレって、アレに決まってるだろう。凡人がどうたらこうたら」
「君、凡人なの?」
「いや、違うけど。凡人……といわれても、具体的に何が凡人なのかよくわからんし……人並みって所だ」
「だったら話しかけないで」
 
 うおお。なんて切り返しだ。
 
 まるでゴミでも見るかのような眼差しを俺にくれやがってこのやろう。
 
 話しかけるなっておい。なんだそれは。しかし口に出せない。なんというか、威圧感というモノがだな……。
 
「いや、その、すまん」
 
 俺は、思わず何か悪い事をしたのだろうかという疑問を浮かび上がらせただけでなく、申し訳ないと思う気持ちを一瞬、ほんの一瞬でも心中に芽生えさせてしまった事に対して許せないモノを感じていた。
 
 ついつい謝ってしまった自分が情けない。
 
 コレが俺と高町なのはのファーストコンタクトと言うわけだ。
 
 失敗したという気持ちで胸がいっぱいになったのは言うまでも無かろう。
 
 
 高町なのはの憂鬱 (9) 完
 
 
 
 あとがき と Web拍手メッセージのお返事
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| 神八 | 02:34 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
高町なのはの憂鬱 (10)

 
 失敗といえば、理事長の件があったな。
 
 始業式中、理事長に呼ばれたのを覚えているだろうか。覚えててくれたなら幸いだ。
 
 
 始業式、自己紹介後の話にさかのぼって説明してやろう。当時の状況を。
 
 
――――
 
 
 意味不明な空気のまま自己紹介タイムは終了。
 
 高町なのははその異様とまでに言える空気を作り出したことに気がついていないようだ。
 
 異様な空気は依然としたまま帰りのホームルームが始まり、空気が変わる事無く終わった。
 
 クラスの奴ら、未だに唖然としたまま目をぱちくりさせていやがる。
 
 状況が良くつかめていないらしい。俺だってつかめていない。
 
 当の本人、高町なのははというと、先生よりも先に教室から出て行きやがった。
 
 良く分からない不思議発言をぶちかました美人転校生が教室を出て行ったことにより、殺伐としていた空気が少しは元に戻ったことだろう。
 
 あぁ、良かった。あの空気の中に長時間いたら発狂しかねなかったぞ。
 
 それがきっかけになったか、皆ハッとし、各々帰宅の準備をし始めた。
 
 その最中に「なんだったんだ、あれ」的な発言がちらほら聞こえる。
 
「わからん、俺にはわからん」
 と理解出来ず、考えるのを諦め投げ出す奴らいれば、
 
「きっと場を和ませようとしたんだ、逆に凍ったけど」
「あー、そうかもなー」
 と、前向きに解釈し受け止めようとする奴らも。
 
 ざわめきは一向に静まる気配が無い。帰る気無いのか? お前ら。
 
 
 シグナム先生の怒号の一言が響くまで、クラスの連中は誰一人教室から出なかったとさ。
 
――――
 
 学生塔昇降口でスバル嬢たちと別れた俺は理事長室に向かうことにした。
 
 またあの長い道のりを歩まなくてはならないのか、俺は。
 
 考えるだけで億劫になってくる。
 
 しばらくの間、一人、とぼとぼとだだっ広い塔間を歩いていると、後ろから何か得体の知れないものが猛スピードで近づいてくるのを感じた。
 
 いや。別に耳が良いとか、気を感じることが出来るとか、そういった特殊なスキルは持ってないぞ?
 
 普通に聞こえるんだよ。奇声と爆音が。後ろから。
 
 ただ事じゃねぇ。そう思って振り返ってみると、そこに映るのは、ウイングロードという奴で空中を駆けてくるスバル嬢と、そのスバル嬢に担がれる橙色をしたショートツインテールの女子生徒が。
 
 爆音の正体は、スバル嬢の脚部用デバイス、『マッハキャリバー』のエンジン音(?)で、奇声の正体は、橙色の髪の少女の叫び――だった。
 
「お〜い、待って待って〜」
 
 スバル嬢が片腕を振りながら猛スピードで近づ――通り過ぎていった。……おい。止まれよ。
 
 華麗に目の前をスルーしたスバル嬢は四十メートルぐらいだろうか、目測だが、それぐらいで先ようやく止まった。
 
 スバル嬢に担がれていている女子生徒はピクピク痙攣しているように見えるぞ。大丈夫なのか?
 
「車は急には止まれないよ〜」
 
 当たり前なことを呟きながらすいす〜っとそのデバイスを駆りながら近づいてくる。
 
 それにしても、それ(スバル嬢の脚部用デバイス)、いいな。今度貸してくれよ。
 
 移動が実に楽そうだ。あとで頼んでみるとしよう。
  
「あぁ。そうだな。で、何用か? つい今さっきそこで別れたばかりな気がしてならないだが」
「忘れ物だよ〜。ほら〜」
 
 若干邪まなことを考えつつ、先程の別れはいったいなんだったのかと愚痴気味に呟いてみる。勿論スバル嬢は気にすることなく用件をスッパリと切り出した。
 
 差し出されたのは、俺の学生証だった。いつ落としたんだろうな、全く気付いていなかったぞ。
 
「お、おぉ? あれ? なんでスバルさんが? い、いや、兎に角、ありがとう」
 
 感謝感謝。本当にありがたいことだ。何せコレが無いと学園に入れないらしいからな。
 
 ……初日は普通に入ったが。
 
「えへへ〜、さっき下駄箱で拾ったんだ〜。感謝したまえよ〜」
 
 大丈夫だ。ちゃんと感謝してますって。
 
「そ、そうか……感謝する…………とろこで、だな、そのグタッとしている御方は一体だれでしょうかね?」
 
 グタッとしている理由は聞かずともわかるんだがな。
 
 俺の言葉に反応したのか、スバル嬢に担がれる女子生徒が口を開く。
 
「てぃ、ティアナ……ティアナ・ランスター、よ……自己紹介、ちゃんと聞いて、なかった、の?」
 
 やべぇ。死にそうだ。誰かシャマル先生を――!
 
 そうか。この人が昨日理事長騒動に巻き込まれた残念な人だったのか……。
 
 今も残念なことになっているわけだが。
 
「すまん。緊張していたんでな。全く覚えていない」
「そ、それじゃあ、今、覚えな、さい……」
 
 そうとう気分が悪そうですね。そりゃまぁ、担がれて、猛スピードで連れまわされれば酔うわな。
 
「あ、あぁ。わかった、わかったから今はとりあえず帰ったほうがいい、と思う。それともシャマル先生を呼ぶか?」 
「ティアはこれぐらいどうってことないよね〜」
 
 俺はティアナ嬢に言ったつもりだったんだが……。
 
「そ、そうよ、これぐらい……うっ!」
「てぃ、ティア?!」
 
 全然駄目じゃねぇか。帰れ。もう帰れよ。用は済んだだろう。そもそも何でティアナ嬢を連れてきたんだ? なんて可哀想な人だろう。ティアナと言う人は。
 
「…………」
  
 ティアナ嬢の容態が悪化。
 
 スバル嬢には焦りの表情が。
 
「ここは私に任せて! チョップ君は先に行って!」
「チョップ君じゃない」
 
――――
 
 言われるまでもなく、俺は二人をおいて職員塔へと向かった。
 
 どうにかなるだろう。あの二人なら。気にしたら負けだ。
 
 しまった、デバイスを借りるのを忘れて……いや、あの状況でそんな事いえるわけが無い。
 
 結局徒歩かよ。
 
 
 職員塔にたどり着くと、そこにはあの人が立っていた。(主にスバル嬢のせいで)どん底まで下がっていたモチベーションが一気にマックスまで跳ね上がった気がする。
 
「フェイトさん!」
 
 今日のフェイトさんはツインテール。なんと可愛らしいことか。思わず飛びつきたくなってしまったが何とか理性が打ち勝ち、平常心を保つことに成功した俺は、職員塔入り口前に立つフェイトさんの下へと駆け寄った。
 
「あ、や、やっと来た。も、もう! ずっと待ってたんだからね!」
 
 はい?
 
 フェイトさんは半ば恥らうように頬を赤く染め、その言葉を吐き棄てた。
 
 
 高町なのはの憂鬱 (10) 完
 
 
 〜あとがき〜
 
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